そして。

この中で一番、まだシルナとの信頼関係が薄いはずのリューイもまた。

すぐに、シルナが演技をしていることに気づいてくれた。

「…勝負ありましたね」

「…!サリエル、あなた…!」

「私のラッパを…!」

リューイが鎌を振り下ろしたにも関わらず、ハクロとコクロは無傷だった。

だが、それで充分だった。

それは、リューイの攻撃が、ハクロとコクロを傷つける為のものじゃなかったから。

リューイの目的は、ただ一つ。

ハクロとコクロ…大天使ミカエルが持つ、"第一ラッパ"をを奪うこと。

そして、その目的は見事に達した。

リューイの手には、ミカエルから奪い取った"第一ラッパ"が握られていた。

あれが…大天使のラッパ。

天使のラッパというくらいだから、きっと荘厳な装飾を施された、立派なトランペットみたいな楽器なのだろうと予想していたのに。

実際は、全然そんなことなかった。

小さくて、簡素な作りで…。まるで、子供の玩具のようだ。

あんなものが、大天使の武器…。

…リューイの鎌の方が、よっぽど強くて価値があるように見えるが…。

ハクロとコクロがあんなに青ざめているのだから、きっと途轍もなく大切なものなんだろう。

…悪いな。

でも、俺達だって、果たさなければならない使命がある。

「…」

リューイはそのラッパを見つめ、何か堪えきれない思いを噛み殺し。

そして、意を決したように、ラッパの吹口に口をつけた。