仲間を殺されたくなかったら、俺とシルナにこの場で死ねと。

「…」

「…」

勝手な提案をするナツキ様を、ハクロとコクロも止めなかった。

当たり前だ。

この二人にしてみれば、俺とシルナを始末出来るのなら、どのような方法でも構わないのだ。止める必要がない。

だが、いくら交換条件を出されたって、自殺しろと言われて「はい」と言えるはずがない。

「…ふざけたことを…」

「実に馬鹿げた提案ですね。で、どうやって私達を殺すつもりなんです?」

マシュリが呟き、イレースが淡々とそう尋ねた。

そうだ。

仲間達を殺す、と簡単に一言で言うけど、いくらアーリヤット皇王でさえ、イレース達を殺すのは簡単なことじゃ…。

…しかし、そこで俺達の知らない、特大級の秘密が明かされた。

「簡単だ。そこにある二つの爆弾を起爆すれば良い」

ナツキ様は、当たり前のように答えた。

…え?

「爆弾…なんて、何処にあるんだよ?」

この部屋の何処かに仕掛けたのか?そこの…テーブルのケーキにでも?

「そこに立ってるじゃないか。…役立たずの爆弾が」

そう言って、ナツキ様は顎をしゃくった。

その先に居るのは、『ムシ』に操られて自我をなくし、虚ろな目でぶつぶつと独り言を呟く、バニシンとイルネ…。

…まさか。

「お前…この二人に何をした…!?」

『ムシ』で洗脳して、操り人形にしているだけだと…。

「その二人に手術を施して、身体の中に爆弾を埋め込んだ。貴様ら魔導師にも効く、特別製の対魔導師爆弾だ」

自慢の作品でも紹介するように、ナツキ様は得意げに説明した。

まさか。そんな…そんなことを、本気で。

この男は、自分の部下を洗脳するだけに留まらず。

身体の中に爆弾を埋め込み、さながら人間爆弾として利用しようとしている。

…許されるはずがない。そんな非道なことが。

「お前っ…!大事な自分の家臣だろうが!何でそんな外道な真似を…!」

「俺の家臣だからこそだ。ミナミノ共和国であれほどの無様を晒して、俺とこの国に恥をかかせた。俺は即刻処刑してやるつもりだったが、そこの二人に止められてな」

無論、ハクロとコクロのことだ。

「洗脳して、人間爆弾として使うという面白い提案をされた。そこで、使ってみることにしたんだ。その判断は正解だったな。…こうして、貴様らに対する切り札として使うことが出来る」

「…」

「こいつらも本望だろうよ。こうして俺の役に立つことで、汚名返上出来たのだから」

…ふざけんな。

人の命を…何だと思ってるのか。

こんなことの為に…部下の命を、虫けらのように…。

「あんたは…あんたは最低だ。一国の王として相応しくない」

「…何だと?」

「自分の家臣のことも、国民のことも、駒としてしか見てない…。そんなだから、あんたはルーデュニア聖王国の国王に選ばれなかったんだよ…!」

「…」

その禁断の一言で、ナツキ様の目の色が変わった。