このパーティの中でも、屈指の武闘派である令月とすぐりを、こうもあっさりと。

「二人共…!大丈夫…!?」

天音が慌てて駆け寄り、回復魔法をかけた。

『ムシ』に操られて、ほとんど自我も失っている状態なのに…あんな風に動けるなんて…!

「多少知識はあるようですが、あなた方が見たのは、あくまで『ムシ』の幼体です」

「この者達の心臓で飼っている『ムシ』は、ミナミノ共和国から帰ってすぐ寄生させたもの。この者達の『ムシ』は、既に成体になっています」

ご丁寧に、ハクロとコクロが説明してくれた。

成体…だと?

俺達が見た『ムシ』でさえ、既に相当な大きさに育っていた。あれでもまだ幼体だったのか…?

いや、待て。

ミナミノ共和国から帰って、すぐ…?

「まさか…二人が決闘に負けたから…?」

シルナも、俺と同じ疑問を口にした。

「そうです。聖魔騎士団の手先に負けるような役立たずは必要ない、とのナツキ様の仰せです」

「処刑してしまおうとしたところを、私達が進言して、『ムシ』を寄生させて操ることにしたのです」

ハクロとコクロは、まるで表情を変えずに淡々と、とんでもないことを口にした。

そんな…まさか、そんな非人道的な…。

「決闘に負けたからって…そんなこと…!」

「そもそも、そっちの科学者の方は負けてなかったはずだけど」

決闘の二回戦で、他ならぬイルネと戦ったマシュリが言った。

そうだ。反則勝ちみたいなものだったが、イルネは決闘に勝利したはずなのに。

「あのような勝利、ナツキ様はお認めになりませんでした。実際、負けたようなものです」

「本来なら処刑されていたところを、こうして救ったのですから、感謝こそされ責められる謂れはありません」

『ムシ』によって自我を破壊しておいて、感謝しろだと?

面の皮が厚いにも程がある。…本当に天使か?お前らは。

「人間としての余計な感情は消え、ナツキ様の忠実な下僕に作り替えて差し上げたのです」

「アーリヤット皇王に仕える『HOME』の構成員として、これほど名誉なことはないでしょう」

「…」

…同じく元『HOME』の構成員で、危うく自分も『ムシ』に支配されていたかもしれないマシュリは。

黙って、変わり果てた元同僚を見つめていた。

…ふざけたことを言いやがって。さっきから。

「お前ら…いい加減にしろよ」

人の命を、人の意志を、侮辱するのも大概にしろ。