「何故、あなたがそちら側にいるのです」

「…それが智天使様の御意志だからです」

と、リューイは静かに答えた。

「聖賢者殿らの味方をしろと。そして、囚われの智天使様をお助けする為に…」

「それは熾天使様と座天使様、我らのお仕えする三大天使様の意志に背く行為です」

「分かっています。でも、智天使様とて三大天使のお一人。ならば私は、智天使様の御意志に従います」

智天使の意志に従うと言う、リューイの意志は固かった。

するとリューイは、俺達が初めて聞く言葉を口にした。

「あなたの持つ"第一のラッパ"を渡してください」

…ラッパ?

ラッパって…あの…楽器のことだよな?

何で今、ラッパの話なんて…。

「それは出来ません。あれは私が聖神ルデス様に賜った…」

「違います。あれは聖神ルデス様のもの。私達大天使はそれを一時的に借りているのであって、私達のものではありません」

「ならば、あなたのものでもないはずです。お渡しすることは出来ません」

…なんか、よく分からんが。

ここはリューイの言葉に従っといた方が良いような気がする。

「リューイ…。そのラッパっていうのが必要なのか?」

「はい…。ミカエルの持つ"第一ラッパ"は、浄化のラッパ。あれを使えば、アーリヤット皇王殿の洗脳を解くことが出来るはずです」

マジかよ。そんな便利グッズが。

じゃあ、なんとしてもその"第一ラッパ"とやらをいただかないとな。

「その"第一ラッパ"とやらがあれば、俺達の目的が達成出来る訳だな?」

「"第一ラッパ"だけではありません。出来ればもう一つ、ラファエルの持つ"第二ラッパ"があれば…」

そんな何個もあんの?ラッパって。

…すると。

「私をお呼びですか」

「…!コクロ…」

ずっと姿が見えないと思ったら。

自分の名前が呼ばれるのを待っていたかのように、ハクロの相方…コクロが姿を現した。

いや、コクロ…じゃないな。

大天使ラファエル、だったか。

ミカエルとラファエルがそれぞれ持つラッパとやらを奪えば、俺達の勝ちってことだろ?

シンプルで分かりやすいじゃないか。

「…悪いが、そのラッパとやらをもらうぞ」

「こちらも申し訳ありませんが、そのご要望に応えることは出来ません…。私達にも、三大天使様に賜った使命があります」

そうかい。

じゃ、交渉決裂だな。

「例え力ずくでも…!」

「遅れて申し訳ありませんでした。皆さんにお会いしたいというお客様を連れてきました」

…は?

そう言うなり、遅れてきたコクロの背後から。

見覚えのある人物が二人、現れた。