「ご安心ください。罠に嵌めようというつもりはありませんから」

ハクロは、俺達の懸念を察したように言った。

…現時点で罠に嵌めてる癖に、「罠に嵌めるつもりはない」と言われて、信用出来るものか。

ナジュに心を読んでもらえれば一発で分かるのだが、残念ながら、天使であるハクロに読心魔法は通用しない。

自分の頭で考えて、自分で判断しなければ。

「…分かった。行こう」

俺より先に、シルナが決断した。

「シルナ…!本当に分かってるのか、こいつは…」

「信用出来ないことは分かってる。でも、彼女に戦意がないなら、戦わずに済むなら、そうするのが一番だから」

「…」

そう…だな。

俺達は、何も戦いたい訳じゃない。あくまで、ナツキ様の洗脳を解き、正気に戻して欲しいだけだ。

目的を果たす為に、武力を使わずに済むのなら、それが一番理想的な解決方法だ。

…勿論、警戒を解くつもりは欠片もないが。

「どうぞ、こちらに。ご案内致します」

何とも落ち着かない気分だ。

ハクロの案内で、俺達は地下室を出て、上の階にある客室に連れて行かれた。