鉄格子を外し、腰を屈めて地下通路の入り口を通ると、人一人がやっと通れるほどの細い道が続いていた。

「この先か…?」

「うん。僕の記憶にある通りなら、皇宮地下の食糧保存庫に繋がってるはず…」

細い地下通路の先に、開けた場所に出た。

マシュリが言うには、この場所は皇宮地下の食糧保存庫であるはずだった。

…しかし、そこで俺達を待っていたのは。

「…!」

「…やはり来ましたね。裏切り者のマシュリ・カティア」

暗く広い地下室に、ハクロ…いや。

大天使ミカエルが、立ちはだかっていた。

「…罠か…」

俺は息が止まるほど驚いたが、マシュリはある程度予測していたらしく、あまり驚かなかった。

「あなた方が秘密裏にアーリヤット皇国に侵入したと、密偵から報告を受けましてね。…ずっと見張らせていたのです。『HOME』に所属していたあなたなら、この地下通路を使うものと思っていました」

…あぁ、そうかい。

じゃあ、俺達はまんまとここに誘い出されたって訳か。

良い度胸じゃないか。

「…丁度良い。待ち伏せされてたのは癪だが、いずれにしてもお前に用があったんだ」

俺は、片手に杖と、もう片方の手に懐中時計を握り締めた。

こっちも本気で行くぞ。

いつの間にか、令月は小太刀を、すぐりも両手に糸を絡ませていた。

イレースの持つ杖も、雷をバチバチと迸らせている。

悪いが、相手が天使だろうと何だろうと、このメンバーで負けるつもりはないぞ。

…え?九人がかりで一人に襲い掛かって恥ずかしくないのか、って?

九人がかりで一人に負ける方が恥ずかしいだろ。

…しかしハクロは、敵意剥き出しの俺達を見ても、全く顔色を変えず。

むしろ、平然と、お客人でも迎えるかのように。

「どうぞ。このようなところで立ち話もなんですし、お上がりください」

と言った。

…は?

「皆様がいらっしゃると聞いたものですから、上に客間をご用意しております。こちらにどうぞ」

「いや…ちょ、は?」

思ってた展開と違う。

早速、火花を散らし合ってバトル…的な展開だと思っていたのだが?

普通に…客人を迎えるかのような応対をされてしまった。

「…」

「…」

俺は、無言でシルナと顔を見合わせた。

…ハクロ…ミカエルの真意が分からない。

敵である俺達を、何で客人のように迎え入れるんだ?

もしかして、これも何かの罠…だったり…?