――――――…さて、こちらは山越えルートを通る一行。

(ほぼ令月とすぐりの功績で)山賊を蹴散らし、無事に山を降りることに成功した。

あとは、列車ルート組との合流地点を目指すだけだ。

ようやく山を越えたとはいえ、安心は出来なかった。

「ここが、アーリヤット皇国の皇都…」

「もっと田舎っぽいのかと思ったけど、そうでもないんだね」

「前来た時も思ったけどさー、ルーデュニア聖王国の王都と、あんまり変わんないねー」

というのが、皇都を見た令月とすぐりの反応である。

…うん。俺もそう思う。

さすがは、ルーデュニア聖王国と並ぶ大国。

皇都の発展ぶりは、ルーデュニア聖王国の王都セレーナに負けず劣らず。

非常に発展した、近代的な都市だった。

ここがアーリヤット皇国だと知らずに、突然連れてこられて「ここはルーデュニア聖王国の王都セレーナですよ」と言われたら、うっかり信じてしまいそうなくらい。

「…う…」

シルナが何かに気づいて、思わず足を止めた。

「…どうした?シルナ」

「いや、あの…」

何だよ、煮え切らないな。言ってくれよ。

「あれですよ」

言い淀むシルナの代わりに、リューイが、シルナの視線の先にあったモノを指差した。

何かと思ったら、ポスターだった。

「魔導師は王都から出ていけ!!」と、赤文字で大きく書かれたポスター。

それが二、三枚、並んでベタベタと貼られていた。

…うわぁ…。

あんなものを見れば、シルナが顔をしかめるのも無理はない。

さっき、ここが王都セレーナだと言われても見分けがつかない、と言ったな。

あれは撤回するよ。

ここは間違いなく、見紛うことなく、アーリヤット皇国だ。

王都セレーナだったら、あんな貼り紙が街中に堂々と貼られてるなんて有り得ない。

あんなもの、セレーナで貼られていようものなら、人権侵害だとしてすぐさま撤去されるはずだ。

それなのに、今俺達の前に貼られているポスター。

随分長いこと貼りっぱなしだったらしくて、紙の端っこが破れかけている。

あんなものが、当たり前のように街中に貼られているとは…。

アーリヤット皇国は、親魔導師国家であるルーデュニア聖王国に対抗するように、反魔導師感情の強い国だ。

根っからの魔導師排斥論者であるナツキ様が治めている国なのだから、当然と言えば当然だが。

でも、この国に住む魔導師には、理不尽な話だろうな。

ただ魔導師として生まれたというだけで、皇都から出ていけ、と罵られるなんて…。

「嫌な雰囲気の国だね。ジャマ王国ほどじゃないけど」

「空気が悪いよねー。ジャマ王国ほどじゃないけど」

これには、元暗殺者二人もこの反応。

…二人共、アーリヤット皇国より更に治安の悪い国から来ているものだから、これくらいでは動じない。

非常に頼もしい奴らである。