やがて、時間をかけて列車は皇都の駅に、無事に到着した。

しかし、気を抜くことは出来なかった。

「…」

さり気なく、僕は周囲を見渡した。

「…どうです。気づかれていますか?」

イレースさんが、小声でそう聞いてきた。

僕は、視界に入った人間の心を覗こうとしたが…それは簡単なことではなかった。

皇都の主要な駅だけあって、人の数が多い。

こうなると、僕の読心魔法は不利だ。

最大でも、同時に10人ずつしか読心出来ない。それも、長くは続けられない。

近くにいる人間から、順番に10人ずつ心を覗いてみたが…。

「…っ…」

あまりの人の多さ、情報量の多さに、数分足らずで、ズキンと鋭く側頭部が痛んだ。

「ナジュ君!駄目だよ、無理しないで…!」

慌てて、天音さんが僕を止めようとした。

それでも、なおも読心を続けようとしたが…。

「だ…大丈夫です。もしも追っ手が来ていたら、心を読めば分かるはず…」

「頭痛がしたのなら、それ以上はやめておきなさい。今ここであなたに倒れられたら、引き摺っていくのが面倒です」

イレースさんに、ばっさりと一刀両断された。

…せめて、抱えていってもらえません?

「既に見張られている前提で動こう。裏道を案内するから、なんとかそこで撒いて」

キャリーケースの中から、マシュリさんが言った。

「…済みませんね。肝心な時に役に立たずで」

「ううん、いつも助かってるよ。ありがとう、ナジュ君」

…天音さん、あなたは優し過ぎですよ。

僕は読心魔法の使用をやめ、マシュリさんの案内で。

複雑な裏道を通って、山越えルート組との合流地点を目指すことになった。

あとは、彼らが無事に合流地点に辿り着いているかどうかだ。