ベーグルサンドを購入してから、僕達は駅に戻ってきた。

良い時間潰しになりましたね。

「はい、こっちが天音さん。イレースさんはこっちをどうぞ」

「ありがとう、ナジュ君」

「誰が私の分まで買ってきなさいと言いましたか」

まぁまぁ、良いじゃないですか。

協調性は大事ですよ。一応、三人で旅行しているっていう設定なんですから。

一人だけ食べてなかったら、不自然じゃないですか。

僕は、買ってきたベーグルサンドを天音さんとイレースさんに手渡した。

じゃ、早速食べてみますか。

海外旅行で現地の食べ物を買って食べる時って、ちょっとドキドキしますよね。

どんな味がするのかなって。

「もぐもぐ…。うん、美味しいですね」

「本当だ。挟まってるお肉がジューシーで、美味しい」

と言いながら、天音さんはベーグルサンドを頬張っていた。

お口に合ったようで何よりです。

…じゃ、そろそろ種明かしをしても良いですかね。

「天音さん、それ、何の肉だと思います?」

「えっ?チキンじゃないの?フライドチキン…」

フライドチキンのベーグルサンド。いかにも美味しそうですね。
 
でもそれ、実はチキンではないんです。

「それはフライドスネークサンドです」

「えっ…す、スネークって…」

「ヘビですね」

「…」

ベーグルサンドを食べる、天音さんの手が止まった。

ついでに思考も停止していた。

ふふ。期待通りの反応をありがとうございます。

天音さんのそういうところ、凄く好きですよ。

「蛇肉は、アーリヤット皇国では普通に食べられてる食材だよ」

キャリーケースの中から、マシュリさんが教えてくれた。

そうみたいですね。

ルーデュニア聖王国では奇食扱いだけど、世界では蛇食って、結構一般的だったりするんですよ。

割と淡白な味で美味しいとか。

さっき天音さんも、ジューシーで美味しいって言ってましたしね。

「…ちなみに、毒ヘビだそうです」

「えぇっ…!?」

二度びっくり。

大丈夫ですよ。ちゃんと毒抜きはしてありますから。

ヘビ肉サンドを手に、固まってしまっている天音さんをよそに。

イレースさんは、平気な顔をしてベーグルサンドを口にしていた。

…ふむ。

「イレースさん、ヘビ肉に驚かないんですね」

「ヘビくらい何だというのです。大袈裟に騒ぐことではありません」

イレースさんはそう言うと思ったので、あなたに渡したのは違うベーグルサンドなんです。

「イレースさんのはヘビじゃないんですよ。何だと思います?」

「パリパリとしていて芳ばしいですね。小エビやナッツに近い味がしますが…」

ほう。なかなか的確ですね。

「それはクモです。油で揚げた、フライドスパイダー」

「そうですか」

全く顔色を変えないイレースさん、さすがです。