田舎の駅だけあって、駅の周囲も静かなのだが…。

国境に近い駅だからか、ちらほらとお土産物のお店が並んでいた。

ふむ。小道具に使えるかもしれませんね。

「よし。お土産買っていきましょうか。天音さん、どれにします?」

「え。お土産?」

遊びに来たんじゃないってことは分かってますよ。勿論。

でも、

「旅行者を装うなら、お土産の一つや二つ持っているのが自然というものでしょう?」

「あ、そうか…。確かに。それじゃあ僕も…」

僕達は、適当に目についたお土産を購入した。

お菓子の箱をいくつかと、キーホルダーとか…。

「見てください天音さん。アーリヤット皇国Tシャツなんて売ってますよ」

「えっ…。あ、あれはちょっと…逆に目立つんじゃないかな…?」

「面白そうですね。ちょっと買ってきます」

ご当地Tシャツ。なんだか集めたくなりません?

えぇと、サイズはMで良いかな。

「はい、天音さんどうぞ」

「えっ、僕っ…?」

買ってきたアーリヤットTシャツを、早速天音さんに押し付け、いや、プレゼントした。

「きっと天音さんに似合うと思いますよ。どうぞ」

「え、えぇ…。あ、ありがとう…?」

何で疑問形なんですか?
 
しかし、お土産物のお店を見て回るのって、結構楽しいですね。

旅行に来たんじゃないのに、何だか旅行気分になれる。

すると、そんな僕の浮ついた気分を察したらしく。

「あなた達、旅行を満喫してるんじゃありませんよ。本題を忘れてるんじゃないでしょうね」

イレースさんが、すかさず釘を刺した。

おぉっと、イレースさん、さすが分かってますね。

「うっ…。だ、大丈夫だよ。ちゃんと分かってるよ…」

「勿論ですよ。遊んでるように見えるかもしれませんが、ばっちり任務を果たして…。…おっ、天音さん、向こうにベーグルサンドを売ってるお店がありますよ。行ってみましょう」

「ナジュ君…。何だか楽しんでない…?」

気の所為ですよ、気の所為。

ほら、旅行者を装うなら、多少はしゃいでた方が自然に見えるでしょう?