――――――…時は少し遡る。

こちらは、列車を使って皇都に向かうことになった四人…。

…と言うか、三人と一匹、と言った方が正しい。

マシュリさんが猫形態なので。

さすがに駅に猫は連れていけない、ということで、マシュリさんには猫用のキャリーケースに入ってもらった。

マシュリさんは不満そうだったけど、仕方がない。

「どうですか、マシュリさん。運搬される気分は?」

「…良い訳がないよ…。飛び出したくてウズウズする…」

「それはお気の毒ですね。我慢してください」

せめてあなたが犬に『変化』出来たら、盲導犬のフリをして、一緒に列車に乗り込めたんでしょうけどね。

猫だから仕方ない。

「ちょっと、あなた達。喋るんじゃありません。猫と会話しているのを見られたら怪しまれるでしょう」

と、すかさずイレースさんが警告を発した。

お固いですねー、イレースさんは。

「猫は家族ですよ?喋るくらい良いじゃないですか」

「あなたが猫と会話する変人だと思われるのは、一向に構いません。問題は、一緒にいる私まで変人の仲間だと思われることです」

あー成程、はいはい。

良いじゃないですか、ねぇ?変人の仲間で。

類は友を呼ぶってことで。

「酷いこと言いますよね、ねぇ天音さん」

「う、うん…。でも、そろそろ駅だから…。あんまり目立たない方が良いのは確かだよ」

ま、そうなんですけど。

「どうします?変装用に、サングラスでもかけますか」

「余計なことをすれば、余計に怪しまれます。堂々としていればよろしい」

さすがイレースさん。肝が据わってる。

じゃ、僕らもイレースさんを見習っていきますか。

「ね、ねぇ。一応、設定とか考えておかなくて大丈夫かな?」

天音さんが、そう提案した。

「設定?」

「万が一、声をかけられた時の為に…口裏を合わせておいた方が良いでしょ?」

ふむ、確かに。

「それなら…そうですね、僕達三人、大学の同期で、飼い猫をつれて皇都旅行中ってことで」

どうです?いかにもそれっぽいでしょう?

あながち間違ってないですし。大学の同期ではないけれど、同じ学院の教師同士。

楽しく親睦旅行ってことにしておきましょう。

「大学生とは。そこまで若くない癖に、図々しいですね」

「だったら、イレースさんはOL設定の方が良かったですか?まぁイレースさんはその方がお似合いかもしれませんね。いかにも部下をいじめるお局さ、」

「…何か言いましたか?」

ギロッ、と鋭く光るイレースさんの眼光。

ヤバっ。こんな時は。

「…って、天音さんが言ってました」

「えぇっ!?僕!?」

…ともあれ。

じゃ、お互い旅行中のお友達という設定で行きましょうか。