――――――…翌朝。

「羽久、起きて。そろそろ行こう」

令月に揺り起こされて、俺は微睡みから覚醒した。

…なんか、背中がいてぇ…。

「あれ…。俺、何やってたっけ…」

「寝惚けてんねー。山の中だよ」

あ、そうか…。

俺達、今アーリヤット皇国の…山道のど真ん中で野営してたんだった…。

よくよく見たら、俺、岩にもたれ掛かった寝てたらしい。

背中が痛いのも当然だ。

更に、俺の横では。

「学院長せんせー、起きてー」

「うーん、うーん…むにゃむにゃ…」

おっさんの寝ぼけ顔とか、誰得だよ。

朝から気持ち悪いもの見てしまった。寝起き最悪。

「むにゃ…。羽久が…私に失礼なこと考えてる気がする〜…」

「それ寝言かよ。起きてんじゃねぇの?」

さっさと目を覚ませ。夜が明けたなら、こんなところにいつまでも居てたまるか。

「おい、シルナ。…そうだ、特大のチョコマシュマロがあるぞ」

「えっ、チョコマシュマロ!?」

さっきまで寝ぼけ眼だったのに、一瞬で覚醒。

さすが、チョコレートの魔力は凄まじい。

シルナにとっては、何より効果的な目覚まし時計。

「よし、起きたな。行くぞ」

「今日も山賊、来るかなー」

「来たら返り討ちだけどね」

「今日中に、迷わずに皇都に行けると良いですね」

俺、すぐり、令月、リューイの順で、早速歩き出した。

「えぇっ…ちょ、君達…っ!チョコマシュマロは?ねぇ、チョコマシュマロはーっ!?」

シルナがうるせぇ。

急がないとな。急いで皇都に辿り着かなくては。

今頃どうしているだろう。列車ルート組は。

予定通りなら、あいつらは先に皇都に辿り着いているはずだが…。

「…あいつら…どうしてるかな…」

この場にいない四人の安否を思って、空を見上げて小さく呟いた。