「な、何だ?どうした…?」

「…来たね、『八千歳』」

「うん。お客さんだねー」

お、お客さん?

ちょっと、二人で勝手に納得しないでくれ。俺達にも分かるように説明、

「ひぇっ…!」

しかし、説明の必要はなかった。

怯えたシルナが、俺の背中に隠れていた。

おい、俺を盾にするな。

いつの間にか、俺達の四方を塞ぐように、粗末な身なりの屈強な男達が取り囲んでいた。

それぞれ武器を手に、にやにやと笑いながら。

やべぇ…。マジで、ザ・山賊みたいな…。

「お前ら、ここが何処か知ってここに入ってきたんだろうな?」

山賊のボスっぽい男が、挑発的に聞いてきた。

…知ってるよ。

でも、他に皇都に向かうルートがないから、仕方なく入ってきたんだよ。

お宅らの縄張りを荒らすつもりはないんだ。…本当にな。

「随分良い身なりじゃないか。…久々に格好のカモが来やがった」

「ひ、ひぇぇ〜っ!シルナは美味しくないよー!」

シルナがうるせぇ。

イーニシュフェルト魔導学院の学院長ともあろう者が、異国の山賊にビビるんじゃねぇよ。情けない。

「俺達は、ただ皇都に向かいたいだけなんだ」

こういうのは、怯えているのがバレたら、徹底的に付け入られるからな。

嘘でも、怯えてないフリをしなくては。

俺は努めて冷静な口調を装って、山賊達との対話を試みた。

マシュリが言ってたじゃないか。山賊にも色々種類があると。

タチの悪いパターンもあるが、金目のものを素直に渡したら見逃してくれる、話の分かる山賊もいると…。

だったら、俺はその可能性に賭ける。

俺達の目的はハクロとコクロの二人であって、アーリヤット皇国の山賊退治ではないのだ。

こんなところで目立ちたくない。

「お前らと争いたくない。ここは見逃してくれないか?」

「そうだな…。見逃して欲しけりゃ、払うもん払っていきな」

まぁ、タダでは通らせてくれないよな。

橋を渡りたきゃ通行料、ってな。

「分かった。いくら払えば良い?」

手持ちの金額でどうにかなるなら、素直に支払って平和的に解決、

「お前らは五人だからな…。一人1000万、しめて5000万払っていきな」

法外。

吹っ掛けるにも程があるだろ。

「ご、5000万円…。板チョコ何枚分…?」

これには、シルナもびっくり。

…何枚分だろうな、板チョコ。

「板チョコを一枚100円だとして、50万枚ほどですね」

リューイも、律儀に答えなくて良いっての。

「ご、50万枚の板チョコ…!」

「総カロリーは約200000000カロリーですね。これは一般的な成人男性が一日に摂取するカロリーのじゅうま、」 

「ひぇぇぇ!」

「板チョコの話はもう良いっての!」

そんな呑気な話してる場合か?なぁ。

気が抜けるからやめてくれ。