「お前ら、ちゃんと分かってるのか?山越えは危険なんだぞ。山賊が出るってさっき…」

「列車ルートだって負けず劣らず危険なんでしょ?一緒じゃん」

そりゃまぁそうだけど。

列車ルートなら、万が一見つかっても捕まるだけで済むが。

山越えルートでもし山賊に見つかったら、命を奪われる可能性だってあるのだ。

あまりに危険。

…の、はずなのに。

「心配要らないよ。暗殺者時代はよく、密入国の為にジャングルを通ったり、山道を越えたりしてたから」

俺の心配を見透かしたように、令月が言った。

「そ、そうなのか?」

「ルーデュニア聖王国がどうなのかは知らないけど、ジャマ王国には山賊も海賊も盗賊も、珍しくなかったからねー。そういう手合いの相手をするのは慣れてるよ」

なんのことはない。俺とシルナより、遥かに頼もしかった。

まさかの、山賊討伐経験者。

お前らの人生経験って…本当、大人顔負けだな…。 

「それなら…令月君とすぐり君は、山越えルートに来てもらった方が良いかもね…」

「あぁ…」

情けない話だが、俺とシルナより遥かに頼りになりそう。

それにこの二人、マシュリほどではないにしても、目も良いし耳も良いからな。

視界の悪い山道では、二人の視力と聴力が役に立つだろう。

…あれ?俺とシルナ、もしかしてお荷物じゃね?

そして、残るは…。

「リューイ…。お前はどっちにする?」

「私はどちらでも構いませんよ」

とのこと。

リューイも結構キーパーソンだよな…。何と言っても、アーリヤット皇国側に顔が割れていない。

唯一警戒すべきは、リューイの同僚であるハクロとコクロ…ラファエルとミカエルだけだが…。

「それなら、山越えルートに同行してもらえるかな。山賊と戦うことになった時の為に、こちらに戦力を多めに配置しておきたい」

と、シルナが頼んだ。

山賊討伐経験者の令月とすぐりに比べて、俺とシルナはあまりに頼りないからな…。

そこにリューイが加わってもらって、少しでも戦力増強を図りたい。

「分かりました。では、そうしましょう」

「よし。これで決まりだな」

ナジュと天音、イレース、マシュリが列車ルート。

俺とシルナ、令月とすぐり、そしてリューイが山越えルートで。

それぞれ、皇都を目指すことになる。

次に会うのは、皇都にあるナツキ様の住処…。皇宮である。