一方、こちらは元暗殺者組。

こちらの二人は、船が動き始めてからというもの、瞼を閉じて木箱にもたれていた。

…こっちも気分悪いんだろうか?大丈夫か?

「令月、すぐり…大丈夫か?気分悪いのか」

顔色が悪いようには見えないが、この揺れじゃ船酔いは当然、

「え?別に。何ともないけど」

「俺も」

あれっ。

俺が声をかけると、二人は両目をパッチリと開け、普通に返事をした。

「船酔いがしんどくて、寝てたんじゃなかったのか?」

「違うよ。僕達、船酔いなんてしないから」

マジで?

「仕事柄、輸送船に密航するなんてことは日常茶飯事だったからねー。その度に船酔いなんかしてたら、仕事にならないよ」

と、すぐりが教えてくれた。

あぁ…成程、「前職」の職業柄ってことか…。 

なんとも頼もしい奴らだよ。大人顔負け。

船酔いしてる自分が情けなくなってきた。

「でも、具合が悪い訳じゃないなら、何で目を瞑ってたんだ…?」

「これから敵地に乗り込むなら、今のうちに少しでも休んで、英気を養っておこうと思って」

素晴らしい。仕事人の鏡。

船に乗り込むなり、遠足気分でチョコレートを頬張っていたどっかの誰かさんにに。

お前達の爪の垢を煎じて、飲ませてやりたい気分だな。

それから…。

「マシュリは?船酔い、平気なのか」

「え?うん。魔物だからかな。何ともないよ」

マジかよ。羨ましい。

「それに、今回は積み荷の匂いも、それほど強くないし。快適な船旅だね」

これが快適な船旅って、どんな神経してるんだ。羨ましい。

…積み荷の匂いって、どういうことだ…?

…あぁ、駄目だ。気持ち悪くて考えがまとまらないや。

「リューイ、お前は大丈夫なのか…って、愚問だったな…」

「そうですね」

わざわざ聞くまでもなかった。

リューイはけろっとした顔で、足を組んで積み荷の木箱にすわっていた。

余裕じゃないか。
 
…なんかこのメンバー、タフな奴多くね?

普通は船酔いに苦しんで当然なのに、まともに船酔いしてるの、俺とシルナと天音の三人だけ。

そう聞くと、俺達三人が軟弱なだけのように思えるかもしれないが。

逆だから。他のメンバーが人外過ぎるだけだから。

普通船酔いするよ。なぁ?