リューイに手を貸す?俺達が?

これまで、リューイに手を貸してもらったことはあっても。

俺達がリューイに手を貸したことはなかった。

「どういうこと?リューイ君…何かあったの?」

「…はい。私の主である智天使様が、熾天使様と座天使様に捕らえられました」

…は?

あまりの急展開発言に、俺は思わず目が点になった。

しかし、リューイは構わず話し続けた。

「私の目的は、囚われの智天使様をお救いすることです。ですが、私一人の力では到底叶いません。ですから、誰かの助けが必要なのです」

それで、俺達に手を貸して欲しいと?そういうこと?

「ちょ…ちょっと待って。どうしてそんなことになったの?智天使…ケルビム様と、熾天使と座天使は仲間じゃないの?」

慌てて、シルナがそう尋ねた。

そうだよ。同じ…三大天使とか言う、お偉い天使仲間なんだろう?

それが何で、仲間に囚われるようなことになるんだ。

シルナがその質問をすると、リューイは僅かに表情を曇らせ。

それでも、事情を詳しく説明してくれた。

「…智天使様は、熾天使様と座天使様に、聖賢者殿から手を引くべきだと主張したのです。アーリヤット皇王を操り、ルーデュニア聖王国に敵対させ、罪のない人々を巻き込むのは間違っていると…」

「…」

「ですが、熾天使様と座天使様は、智天使様の意見を受け入れませんでした。あくまで聖賢者殿を許すことは出来ない。ですから、反対する智天使様を捕らえ…」

「…強硬に、あくまで私を追い詰める為にナツキ様を利用するつもりなんだね?」

「そうです」

…なんてことだ。

智天使は、俺達を助けようとしてくれた。他の天使仲間に、俺達から手を引くよう頼んでくれた。

でも天使仲間は、その頼みを聞き入れないどころか。

天使の風上にも置けない裏切り者として、智天使を捕らえ、黙らせた。

全ては、シルナに神の粛清を下す為に…。

「囚われる寸前、智天使様は私だけを逃しました。後のことは頼む、と」

「…」

「それはつまり、あなた方を手助けし、熾天使様と座天使様からお守りしろ、という意味だと思っています。だから私は、智天使様の願いを叶えます」

リューイらしいな。

あくまで、それがご主人様の意志だから…智天使ケルビムの意志だから、その意志を最後まで遂行する。

例え、仲間であるミカエルとラファエルと敵対することになろうとも。

だけど…リューイ、お前は…。

「…それで良いのか?本当に…」

本当は違うだろう。

俺達を助けることは智天使の意志であって、リューイの意志ではない。

リューイが「本当にしたいこと」じゃないはずだ。

リューイが本当に望んでいること…それは…。

「そんなことより、お前は…助けたいんじゃないのか。智天使のことを」

ミカエルとラファエルのことなんてどうでも良い。

お前はただ、自分の主である智天使を助けたい。

それだけなんじゃないのか。…お前の望みは。

「…智天使様の意志は私の意志。智天使様はあなた方を助けるよう、私に命令された。しかし、自分自身を助けて欲しいとは、一言も仰らなかった…」

「だけど、お前は助けたいんだろう?」

「…はい、そうです。だから…あなた方のもとに来たのです」

覚悟を決めた表情で、リューイは俺達を見つめた。