「リューイ、お前何処行って…」

「リューイ君、良いところに!チョコシュークリームを食べ、」

「シルナ、お前はちょっと黙ってろ」

今はチョコシュークリームのことなんてどうでも良いんだよ。

「お前何処に行ってたんだよ?『ムシ』退治の後、いつの間にかいなくなってたから…」

「…?皆さんが無事に仲間の洗脳を解いたことを見届けたので、天界に帰っていただけですが」

だけですが、じゃないんだよ。

「それならそうと、今から帰るって言ってから帰れよ。突然いなくなったら心配するだろ」

「心配…?あなた方が、私を?何故です?」

「いや…何故ですって言われても…」

何故も何もないだろ。

そんなの決まってる。

「仲間だからに決まってるだろ」

他の理由があるのか?

それとも、天界の常識では違うのか。

「…仲間…仲間ですか…」

リューイは、その言葉を何度か繰り返した。

…どうしたよ?何か気になることでも?

「ともかく、無事で良かった。それに、良いところに来てくれた」

丁度、天使の意見を聞きたいと思ってたんだよ。

「俺達はこれから、アーリヤット皇国に直接出向いて行って、ナツキ様を操ってるハクロとコクロ…ミカエルとラファエルだっけ?そいつらを退治しに行くつもりなんだ」

と、俺は正直にリューイに打ち明けた。

リューイ自身も天使、つまり「あちら側」の存在だが、でもリューイは信用出来る。

同じ天使仲間とはいえ、ミカエルとラファエルは、派閥?が違うらしいし。

「お前にとっては同胞だろうから、手を貸してくれとは言わない。でも、意見を聞かせてくれないか。俺達がどうやってナツキ様を、」

「分かりました。ミカエルとラファエルを止めるつもりなら、私も協力しましょう」

…マジで?

いやに話が分かるな…。

「アーリヤット皇国に行くのであれば、私も同行しましょう。力を貸します」

「え?いや…それは嬉しいけど…。そこまでしてくれとは言ってないぞ」

ただ意見を聞かせてくれるだけで良い。

同胞と敵対するのは、リューイも言えども気が進まないだろう。

「構いません。あのようなやり方で聖賢者殿を追い詰めることは、私の主の望むところではありませんから」 

あくまでリューイは、ご主人である智天使の指示に従うと。

その為なら、同胞であるラファエルとミカエルと敵対することも厭わないと…。

それは頼もしいけれど、でも、俺としてはリューイにそのようなことをして欲しいとは思わない。

誰だって、自分の同胞を手に掛けたくはないだろう。当たり前だ。

そこまでして欲しいとは思わない。

「いや、リューイ。やっぱり、そこまでする必要はない。アーリヤット皇国には俺達だけで…」

「違うんです、時魔導師殿」

「…何が?」

「下心があるから、協力を申し出ているのです。私はあなた方に手を貸します。だからその代わりに…あなた方も、私に手を貸してくれませんか」

…何だと?

一堂が、驚いて顔を上げた。

リューイがそんなこと言い出すの、初めてだ。