…分かった。シルナがそうするつもりなら。

「俺も一緒に行くよ、シルナ」

「羽久…」

お前が行くところなら、俺は何処にでも一緒に行く。

冥界だろうと異空間だろうと、アーリヤット皇国だろうと。

シルナを一人では行かせない。

「でも…言うまでもなく、危険な旅だよ。姿を現す訳にはいかないから、隠れて密入国して…」

「分かってる」

俺達がアーリヤット皇国にやって来たと知れたら、すぐさま送り返されるのがオチ。

それどころか、うっかり捕らえられかねない。

「もし正体がバレたら、ナツキ様にどんな目に遭わされるか…」

百も承知だ。そんなことだ。

「もう何も言うな」

何もかも、全部覚悟の上で言ってるんだよ。

ありとあらゆる危険を考慮に入れて、それでも俺は、シルナを一人で危険な旅に行かせる訳にはいかない。そう判断した。

…更に、俺達には頼もしい仲間達がいる。

「分かっていると思いますが、私も同行しますよ」

「…!イレースちゃん…」

「勿論、僕も行きますよ。不死身の読心魔法使いは必要でしょう?」

「ナジュ君が行くなら、僕も大人しく待ってる訳にはいかないね」

イレースとナジュ、それに天音も。

それから、

「アーリヤット皇国は僕の古巣。僕が案内するよ」

「…マシュリ君まで…」

そう言うと思ってたよ。…お前らなら。

考えること、俺と同じだな。

更に、

「僕も行けるよ。アーリヤット皇国に潜入するのは二度目だからね」

「姿を隠しての潜入任務なら、俺らの十八番だもんねー」

いつの間にか、令月とすぐりが姿を現していた。

お前ら…全然気配を感じなかったんだが、一体いつからそこに?

気づいたら、にゅっと生えてた。

園芸部の畑を弄ってるんじゃなかったのか。置いていかれたら堪らないとばかりに、絶妙なタイミングで現れやがった。

「令月君…。すぐり君も…」

「まさか、子供は置いてけぼりとは言わないよね?」

そりゃお前らは、そこらの大人より遥かに頼もしい子供だが。

でも、危険な任務であることに変わりはない。

「そんな…。皆を危険に晒す訳にはいかないよ。これは元々、私が抱えている問題であって…。皆を巻き込む訳には…」

「また始まりましたか。…面倒臭いですね、うだうだ言ってたって結局は私達もついていくんだから、さっさと納得しなさい」

…イレース、身も蓋もない。

でも、良いこと言うよ、お前は。

「まぁ、そう言わず。イレースさん、これは前振りみたいなものですよ。最初にこのやり取りをしないと。お約束って感じです」

ナジュまで。

「…言われてるぞ、シルナ…」

「うん…。優しいんだか冷たいんだが、何だか温度差で風邪引きそうだね…」

遠い目のシルナである。

…全くだな。