「ナツキ様を正気に戻さなくては。あの方が操られている限り、現状の打開は望めないでしょう」

「…それは分かります。ですが、その為の方法は?」

そこがネックだよな。…どうしても。

「私も、色々と方法を考えてはいます。でも…前例のないことだけに、どれも確かな手段とは言い切れず…」

「そうでしょうね…」

「フユリ様は、秘密裏にナツキ様に書簡を送って、真実を呼びかけてはもらえませんか?」

試せることは、何でも試した方が良い。

呼びかけくらいで、ナツキ様が目を覚ますとは思えないけど。

妹からの言葉なら、まるっきり無視はしない…はず、だと信じたい。

「果たして、それで目を覚ましてくれるでしょうか?」

「何もやらないよりはマシです。…お願い出来ますか?」

「分かりました。やってみましょう」

ありがとうございます。

さすがフユリ様。話が早い。

「その間に、私達も学院の方で、これからどうするかの作戦を練っておきます」

「はい。私に出来ることがあれば、いつでも、何でも言ってください」

と言って、フユリ様は微笑んでみせた。

…なんとも懐の広い。これがルーデュニア聖王国女王の器。

フユリ様への憎しみを利用され、天使達に良いように操られている兄のナツキ様とは、雲泥の差である。