包み隠さず、全てを打ち明けた。

ナツキ様が突然、ルーデュニア聖王国に牙を剥き、あの忌まわしい世界魔導師保護条約なるものを打ち立てたのか。

フユリ様をミナミノ共和国に閉じ込め、サミットに参加させなかったのも。

ルーデュニア聖王国に決闘を挑んできたのも。

全ては、ナツキ様自身の意志…ではなく。

彼の傍らにいた二人の側近、ハクロとコクロに操られているから。

そして、そのハクロとコクロの正体は、聖神ルデスに仕える大天使…ミカエルとラファエルであるということも。

全てはナツキ様の私怨から始まった、と思っていたけど。

回り回って、実は俺達のせいだったんだな。

そう思うと、フユリ様や、何の罪もないルーデュニア聖王国の民に申し訳なかった。

「そうですか…。兄は自分の意志ではなく…天使に操られて…」

「…本当に申し訳ありませんでした、フユリ様」

シルナは深々と頭を下げ、一緒にいた俺も続いた。

謝っても謝りきれない、とはこのこと。

もういっそルーデュニア聖王国から出て行ってくれ、と言われても文句は言えない。

…それなのに。

「…何故、あなた方が謝るのです?」

「それは…だって…天使達は私に裁きを下す為に…ナツキ様を利用されたのであって…」

「兄が利用されたのは、兄の心の弱さ故です。兄の私への憎しみが、天使達に付け入る隙を与えたのでしょう」

「…フユリ様…」

この期に及んで、俺とシルナを責めないでいてくれるのか。

いっそ、思いっきり詰ってくれた方が楽だったかもな。

余計に申し訳なくなってくる。

「起きてしまったことを悔いるより、これからどうするべきかを一緒に考えましょう。シルナ学院長」

「…ありがとうございます、フユリ様」

「良いのです。このルーデュニア聖王国は、他ならぬあなたに何度も救われてきました。今回も、きっとそうであることを願います」

…そうだな。

これまで何度も、俺とシルナのせいで危機を迎え。

その度に、俺とシルナと…仲間達の力を合わせて解決してきた。

だから、今回もそうしよう。

フユリ様の言う通りだ。

「…何はともあれ、まずは、元凶である大天使…ミカエルとラファエルを、ナツキ様から引き離さなければなりません」

と、シルナが言った。

ナツキ様を、天使の支配から解放する。

そうすれば、ルーデュニア聖王国から手を引いてくれる…はずだ。

と言うか、そうしなければ、何度芽を潰しても潰しても。

手を変え品を変え、ナツキ様は延々とルーデュニア聖王国にちょっかいをかけてくることだろう。

ここを解決しない限り、この国の安全は望めない。