「…あの裏切り者が、何か?」
セラフィムとソロネが、シルナのことをどう思っているのかは言うに及ばない。
説得は困難を極めるだろう。
だけど、私は諦めない。
もう決めたことですから。
「今すぐ、彼から手を引くべきだと言おうと思ったのです」
「…何?」
「私はここしばらくの間、臣下の大天使を地上に派遣して、シルナ・エインリーの様子を観察していました」
私は、彼の真意が知りたかった。
裏切り者と呼ばれた彼が、本当はどんな人なのか知りたかった。
「確かに、彼は神に反旗を翻した…大罪人でしょう。ですが、彼は決して悪人ではない。むしろ、底無しに優しく、仲間思いで、他人の痛みに敏感な方です」
「…」
「仲間の為に、自分の命を危険に晒すことが出来る人です。そのような優しい人を、神の裁きによって処刑するのは間違っています」
例え許されない罪を犯そうとも。
自分ではなく仲間の為に命を懸ける彼には、情状酌量の余地があるはず。
仮に、それでも彼の罪が許されず、神の裁きを受けなければならないのだとしても。
それは、聖神ルデス様の下僕に過ぎない私達が、勝手に判断して決めて良いことではない。
「今すぐ、聖賢者シルナ・エインリーから、そしてルーデュニア聖王国から手を引きましょう。彼のことはもう、そっとして…」
「…私の輩下から報告があった。私の蒔いた『種』を、あなたの輩下である大天使が助言して、芽吹く前に摘み取ったとか」
「…」
…ルーデュニア聖王国にバラ撒いた、『ムシ』のことですね。
「はい、そうです」
「大天使の分際で、随分と勝手なことをしてくれたものだな」
「指示したのは私です。シルナ・エインリーに真実を話し、仲間を助ける方法を教えてあげてくれと。リューイは私の指示に従っただけです」
リューイは何も悪くない。彼はいつだって、私の力になってくれる。
「何故、勝手にそのような指示を出した?上手く行けば、あの忌まわしい裏切り者と、邪神の器を始末することが出来たものを」
「仲間の手で処刑されるなら、奴らも本望だったろうに」
「…そんな…残酷なこと…」
よく、平然とそんなことが言えたものだ。
誰よりも仲間思いな彼らが、他ならぬ仲間の手によって殺されるなんて。
そんな残酷なことを…。
「残酷?奴が我らの主にしたことを棚に上げて、この程度が残酷だと?」
「許せとは言いません。でも、理解してあげて欲しいのです…!彼らは決して悪人ではない。裁きを下すに値するとは、とても…」
「そこまでだ」
…えっ?
セラフィムはピシャリとそう言い、席を立ち上がった。
セラフィムの目は、怒りのあまり真っ赤に燃えていた。
「シルナ・エインリーというのは、とんでもない極悪人、大罪人よ。あまつさえ、三大天使の一人を抱き込んで、神の裁きから逃れようとするとは」
「…!違います、これは他ならぬ、私の意志で…」
「三大天使ともあろう者が、敵に絆されるとは…。なんとも情けない」
セラフィムだけではなかった。
ソロネもまた立ち上がり、怒りに燃えた目で私を睨んでいた。
その時になってようやく、私は自分の判断があまりに安易だったことを知った。
セラフィムとソロネが、シルナのことをどう思っているのかは言うに及ばない。
説得は困難を極めるだろう。
だけど、私は諦めない。
もう決めたことですから。
「今すぐ、彼から手を引くべきだと言おうと思ったのです」
「…何?」
「私はここしばらくの間、臣下の大天使を地上に派遣して、シルナ・エインリーの様子を観察していました」
私は、彼の真意が知りたかった。
裏切り者と呼ばれた彼が、本当はどんな人なのか知りたかった。
「確かに、彼は神に反旗を翻した…大罪人でしょう。ですが、彼は決して悪人ではない。むしろ、底無しに優しく、仲間思いで、他人の痛みに敏感な方です」
「…」
「仲間の為に、自分の命を危険に晒すことが出来る人です。そのような優しい人を、神の裁きによって処刑するのは間違っています」
例え許されない罪を犯そうとも。
自分ではなく仲間の為に命を懸ける彼には、情状酌量の余地があるはず。
仮に、それでも彼の罪が許されず、神の裁きを受けなければならないのだとしても。
それは、聖神ルデス様の下僕に過ぎない私達が、勝手に判断して決めて良いことではない。
「今すぐ、聖賢者シルナ・エインリーから、そしてルーデュニア聖王国から手を引きましょう。彼のことはもう、そっとして…」
「…私の輩下から報告があった。私の蒔いた『種』を、あなたの輩下である大天使が助言して、芽吹く前に摘み取ったとか」
「…」
…ルーデュニア聖王国にバラ撒いた、『ムシ』のことですね。
「はい、そうです」
「大天使の分際で、随分と勝手なことをしてくれたものだな」
「指示したのは私です。シルナ・エインリーに真実を話し、仲間を助ける方法を教えてあげてくれと。リューイは私の指示に従っただけです」
リューイは何も悪くない。彼はいつだって、私の力になってくれる。
「何故、勝手にそのような指示を出した?上手く行けば、あの忌まわしい裏切り者と、邪神の器を始末することが出来たものを」
「仲間の手で処刑されるなら、奴らも本望だったろうに」
「…そんな…残酷なこと…」
よく、平然とそんなことが言えたものだ。
誰よりも仲間思いな彼らが、他ならぬ仲間の手によって殺されるなんて。
そんな残酷なことを…。
「残酷?奴が我らの主にしたことを棚に上げて、この程度が残酷だと?」
「許せとは言いません。でも、理解してあげて欲しいのです…!彼らは決して悪人ではない。裁きを下すに値するとは、とても…」
「そこまでだ」
…えっ?
セラフィムはピシャリとそう言い、席を立ち上がった。
セラフィムの目は、怒りのあまり真っ赤に燃えていた。
「シルナ・エインリーというのは、とんでもない極悪人、大罪人よ。あまつさえ、三大天使の一人を抱き込んで、神の裁きから逃れようとするとは」
「…!違います、これは他ならぬ、私の意志で…」
「三大天使ともあろう者が、敵に絆されるとは…。なんとも情けない」
セラフィムだけではなかった。
ソロネもまた立ち上がり、怒りに燃えた目で私を睨んでいた。
その時になってようやく、私は自分の判断があまりに安易だったことを知った。