非常に頼もしい助っ人が来てくれて、ホッとしたのも束の間。

「来たみたいだよ。お客さん」

マシュリが、真っ先に気配を察知した。

げっ…。

「来たか…!」

作戦会議する暇もないな。

しかも、学院の敷地内に踏み込んでくるなり。

ご挨拶とばかりに、キュレムの長距離魔弾砲撃が飛んできた。

ひぇっ…。

先制パンチと言わんばかり。

「容赦のない一撃ですね。…キュレムさんらしくもない」

キュレムの放った魔弾を、相棒であるルイーシュが異空間にすっ飛ばした。

危ねっ…!

なんてことするんだ。生徒や建物への被害を全然考慮に入れてない。

「…人質に取ったジュリスさんとルイーシュさんを、返してもらいますよ」

挑んできたシュニィは、普段の彼女らしからぬギラギラした目をしていた。

やべぇ…。いつもは美人なのに、殺気立ってると美人が台無しだぞ。

なんて、アトラスに言ったら殴られそうだが。

「勝手に人質扱いすんじゃねぇ。お前ら、いい加減目を覚ませ」

「キュレムさん。あなた心臓の中にイモムシ居るんですよ。取ってあげますからそこ、動かないでください」

正気に戻ったジュリスとルイーシュが、聖魔騎士団の仲間達に呼びかけたが…。

「はぁ?…何ふざけたこと言ってやがる」

逆ギレのキュレム。…ですよねー。

無駄だ。『ムシ』に身体を乗っ取られている以上、いくら呼びかけても俺達の声は届かない。

「こんなに聞き分けがないとは…。皆さん反抗期ですね」

冗談言ってる場合じゃないぞ。ルイーシュ。

「ジュリスさんとルイーシュさんを丸め込んだようですね。どんな汚い手を使ったのか…」

「…シュニィちゃん…」

「そちらがその気なら、こちらも多少手荒な真似をしても文句は言えませんね」

いや、ハナから手加減してくれる気なんかないだろ。

と思っていたら、シュニィは本当に容赦なかった。

豊富な魔力量に物を言わせた、凄まじい魔力の爆弾を生成。

「シュニィ…!?あいつ…!」

嘘だろ。あれ、本気でこっちに投げつけるつもりなのか。

さすがに脅しのつもりじゃないか、と信じたかったが。

「…どうやら彼女、本気らしいですよ」

「マジかよ…!?」

シュニィの心を読んだナジュが、無情にそう教えてくれた。

…そうか。本気で。

校舎を爆破してでも、生徒を巻き込んででも、何なら助けに来たはずのジュリスやルイーシュに危害が及んでも。

それで俺とシルナ、それからベリクリーデを始末出来るのなら、やる。

なんて恐ろしい。『ムシ』のせいで、その程度の判断さえ出来なくなっているのか。

戦慄するところだな。

…こちらに、珠蓮が居なかったら、の話だが。