それなのに、令月もすぐりもケロッとして。

「何で?聖魔騎士団の隊舎なんて簡単に侵入出来るよ」

「そういう問題じゃない。もしこっそり潜り込んでるのがバレたら、袋の鼠なんだぞ」

お前らの連携の恐ろしさは知ってるが、さすがに聖魔騎士団魔導部隊大隊長達に囲まれたら、いくらお前達でも…。

…しかし。

「へぇー?俺等が捕まるようなミスをすると思ってる?」

「舐められたものだね。姿を隠した隠密行動なら、この場にいる誰にも負けないよ」

うっ…。そ、それは…。

その点は…確かに信用してるけども。

「僕が一緒に行くよ」

令月とすぐりに加えて、マシュリが偵察に立候補した。

マシュリまで…。

「猫の姿に『変化』すれば、仮に姿を見られたとしても誤魔化せる」

「マシュリ…」

「懐かしーね。前にもこの三人で偵察行ったよねー」

「そういえばそうだね」

…そんなことあったな。

思い出してイラッとしたが、だがあの時と違って、今回はちゃんと事前に宣言してから行こうとしている。

あの時に比べたら、進歩していると思うべきか。

安心は出来ないけどな。

「…良いか、絶対無事に戻ってこい。危ないと思ったらすぐ引き返すんだぞ」

「誰に言ってるのさ。よゆーだよ」

「じゃあ、行ってくる」

令月とすぐりは、窓の外に飛び出していった。

更に、いろりの姿に『変化』したマシュリも、二人の後を追った。

…窓から出るなよ。玄関じゃないんだぞ、そこは。

「あいつら…本当に大丈夫か…?」

「大丈夫だよ、羽久。令月君達なら」

シルナが、俺を安心させるようにそう言った。

更に、

「あれで責任感じてるんですよ。二人共」

と、ナジュ。

「責任?」

「羽久さん達のこと忘れて、むざむざ『ムシ』に操られて、危うく仲間を手に掛けるところだった、ってね」

二人の心を読んで、悟ったのだろう。

「そんなの…あいつらの責任じゃないだろ」

「そうですけど。でも、迷惑をかけてしまった分は、働きで取り戻したい。そういう人達ですから」

「…」

だから、危険な偵察任務に自ら立候補した…ってことか。

有り難いけど、そのせいでお前らが危険な目に遭うなら、本末転倒だ。

「…絶対無事に戻ってこいよ」

お前らの身に何かあったら、『ムシ』に洗脳されるよりずっと悪いんだからな。