生徒達の心臓に巣食っていた『ムシ』達。

寄生されてから時間が経っているせいか、そのサイズは、ジュリスが最初に見た親指サイズから、

ナジュや天音の赤ん坊の手首サイズを、更に超越し。

一匹一匹が、大人の握り拳くらいある。

これ、もう心臓の大きさ越えてね?

とにもかくにもキモい。そしてグロい。

そのグロい『ムシ』は、しばらくうにょうにょ蠢いていたが。

やがて、黒っぽい灰のようになって消えていった。

…ホッ。

「これで、イーニシュフェルト魔導学院の安全は取り戻した。あとは…」

残るは、聖魔騎士団の仲間達を…。

と、言いかけたその時。

「どうやら、お仲間の『ムシ』を退治したようですね」

「…!リューイ…!」

異空間でルイーシュを足止めしてくれていたリューイが、何処からともなく現れた。

お前。遅いぞ。

「なかなか戻ってこないから、心配したじゃないか…!」

「心配?時魔導師殿が、私を?」

何驚いてんだよ?

「リューイ君、無事で良かった。ルイーシュ君は…」

「ここに居ますよ」

リューイの後ろから、ルイーシュがひょこっと顔を覗かせた。

うぉっ。

「る、ルイーシュ…!お前…記憶をなくしたルイーシュか…!?」

また襲ってくるのか?そうなのか?

一瞬身構えてしまったが、ルイーシュはひらひらと両手を振った。

「大丈夫、記憶の戻ったルイーシュです」

「ほ、本当に?」

「天使様直々に、『ムシ』を取り除いてもらいましたよ。キモい芋虫みたいでした」

と、ルイーシュは顔をしかめて言った。

よ、良かった…。

「リューイ…。ルイーシュを正気に戻してくれたんだな。ありがとう…」

「…何故あなたが、私に礼を言うのです?元はと言えば、我々天使が蒔いた『種』のせいで、このような事態に陥っているのに」

「でも、それはお前の意志じゃないんだろ。仲間を助けてもらったんだから、礼を言うのは当然だ」

「…」

…そんなことより。

「学院の皆の記憶は戻した。次は、聖魔騎士団だ」

彼らの『ムシ』を取り除かないことには、枕を高くして寝られないからな。

これ以上『ムシ』がデカくなる前に、今度は彼らの身体から『ムシ』を追い出さなくては。