しかも、更に悪いことに。

「…外が騒がしいと思ったら、またあなた達でしたか」

「げっ…!」

…出た。

イーニシュフェルト魔導学院の女教師、イレース・クローリアだった。

来やがったな。味方にさえ容赦がないと噂のスパルタ教師が…。

こちらも、時間稼ぎの問答に応じてくれるタイプではない。

その証拠に、既にその手には、バチバチと雷を迸らせる杖を握っていた。

やる気満々、殺意も満々じゃないか。

令月とすぐりの二人に加えて、更にイレースまで来たとなると。

現状、俺とベリーシュに勝ち目はない。

少なくとも、殺さないように手加減して…ってのは無理だ。

これは本当に不味いな。逃げた方が良いか?

…逃がしてくれれば、の話だが。

「授業の邪魔です。…成敗してくれます」

「ちっ…!ベリーシュ、お前だけでも逃げ…!」

「ジュリス!駄目だよ。逃げるなら一緒に…」

と、お互いに言いかけたその時。

俺の時間稼ぎが、成功していたことを知った。

背後から、待ち望んでいた助っ人がやって来たのである。





「eimt…ptos」

「eeinforcr」

羽久が時間停止の時魔法を、シルナはその時魔法を強化した。

途端、令月、すぐり、イレースの動きが、ピタリと止まった。

その隙を見逃さず、片腕だけを『変化』させたマシュリ・カティアの鋭く長い爪が。

三人の胸元を、浅く切り裂いた。

血飛沫と共に、三人の身体から、見覚えのある巨大なミミズもどきが飛び出したのだった。