よし、そうと決まれば。

「具体的な作戦を考えよう。まず学院に、」 

と、言いかけたその時。




「…へぇ。何の作戦を考えてるのか、俺にも教えてもらえませんか」



「!?」

突如聞こえた声に振り向くと、そこには聖魔騎士団魔導部隊の制服を着た…。

…空間魔法の使い手、ルイーシュの姿があった。

る…ルイーシュだと…?

「お前、ルイーシュ…!何でここに…!」

「俺の名前、何で知ってるんですか。ますます怪しいですね」

知ってるに決まってるだろ。 

こんな発言するってことは、やっぱりルイーシュも俺達のこと忘れてるんだな。

「異空間に逃げ込めば、俺から逃げられると思ったら大きな間違いです」

そうだろうな。

ルイーシュの空間魔法は、シルナのそれより上だ。

それは俺だって分かってたけど、でもこんなに早く追ってくるとは思わなかった。

だって普段のルイーシュなら、頼まれてもそう簡単には腰を上げない。

ルイーシュの面倒臭がりは、聖魔騎士団でも有名だからだ。

「…珍しいこともあるもんだな。こんなに早く、お前がまともに仕事してるのは」

「はぁ…?何を言ってるんです。ジュリスさんを連れ去った犯人を、野放しにする訳ないでしょう」

なんてことだ。

普段のルイーシュとはかけ離れている。キュレムに聞かせてやりたい台詞。

「さぁ。観念してもらいましょうか」

「ルイーシュ…!思い出してくれ、俺達はお前の敵じゃ…!」

「無駄です。『ムシ』に侵された人間が、正気に戻ることはありません」

リューイは、無情にそう言った。

そして、俺達をルイーシュから庇うように、ルイーシュの前に立ち塞がった。

「…何なんです。あなたは」

「私は"大天使アークアンジェル"のリューイ。聖賢者殿らの…味方です」

…リューイ。

「訳が分かりませんね。あなたが俺の邪魔をすると言うのなら、相手になります」

「リューイ君…!私達も、」

と、シルナが言いかけたが。

「先に行ってください。ここは私が引き受けます」

リューイお前。そんな、誰しも人生で一度は言ってみたい台詞を、こんなところで。

そんなの俺が納得するとでも思ってるのか?

「ふざけんな、馬鹿。お前一人で…!」

「心配なさらずとも、天使は死にませんよ」

「死ななきゃ良いとか、そういう問題じゃないんだよ!」

ナジュといいお前といい、何で不死身の奴らは平気で自分の身を盾にするんだ?

いい加減にしろ。

…しかし。

「早く行ってください。あなた方には、やらなければならないことがあるんでしょう」

「…!それは…」

「だったら、ここで足を止める理由はありません」

…その通りだ。何も間違ってない。

「行って、目的を果たしてください」

「羽久…。ここは」

「…ちっ…」

シルナに視線で制され、俺はやむを得ず、リューイを置き去りにして背を向けた。

畜生。逃げることしか出来ないのかよ、俺は。

「ここは任せる。でも、絶対に戻ってこいよ、リューイ!」

「勿論です」

リューイが頷くのを見届けてから、俺達は再び、シルナの空間魔法で転移した。