…さて、これで俺達がやらなければならないことははっきりした。

…だが、もう一つ確認しておかなければならないことがある。

「…リューイ。お前はどうするんだ?」

俺達に貴重な情報を教えてくれた、リューイのことである。

この状況で、俺が尋ねるままに色々と教えてくれたのだ。

今更、お前が嘘をついてるんじゃないかと疑うことはしないよ。

でも、それ故に…。

「『ムシ』をバラ撒いたのは、元々天使共の計画だったんだろ。それなのにお前は、俺達にそのことを話した」

「はい」 

「それは、仲間の天使に対する裏切りだろ」

俺達に情報をバラしたことが分かったら、仲間の天使に何をされるか。

分からないほど馬鹿じゃあるまい。リューイだって。

「どういうつもりなんだ?何でお前は、敵であるはずの俺たちに味方するような真似をする?」

「それが智天使様の御意志だからです」

馬鹿の一つ覚えのように、リューイはそう言った。

…智天使様の意志が自分の意志、って何度も言ってたもんな。

「じゃあ、その智天使様はどういうつもりなんだ。仲間を裏切るつもりか?」

「いいえ。智天使様は、このようなやり方で聖賢者殿を追い詰めるのは間違っていると思っていらっしゃる。仲間である熾天使様と座天使様を止めようとなさっているのです」

…成程。

仲間の天使を裏切るつもりはないけど、『ムシ』をバラ撒いて洗脳するようなやり方は、間違ってると思った。

だから、このような卑怯な計画を阻止する。

その為に、リューイを俺達のもとに遣わした…。

「じゃあ、リューイ。今のお前は俺達の味方だと思って良いんだな?」

「味方…ですか。いかにも人間的な発想ですね。私は智天使様から、あなた方の手助けをするよう仰せつかっているだです」

「なら仲間じゃないかよ」

「仲間と言えるのですか?ただ、あなた方は私を利用すれば良いというだけで…」

あー。ごちゃごちゃうるさい。

何事にも自分なりの理屈をつけないと、納得出来ないタイプ?

「それを味方だって言うんだよ。四の五の言ってないで納得しろ」

話をややこしくするな。お前は今、俺達の味方だ。事実はそれだけ。

「…意外と横暴ですね、人間って」

「うるせぇ。ともかく、そうと決まれば作戦会議だ」

俺達はこれから、記憶をなくした仲間達に一人ずつ、オペを行わなきゃならないんだろう?

だったら、早いところその為の作戦を立てよう。