「…虫下しを使うとか、説得して思い出してもらう、とかじゃねーの?」

「無理です。心臓に巣食っている『ムシ』を取り出すしかありません」

原因は根本からばっさりと断つ。分かりやすいな。

まさか俺達、『ムシ』に侵された全員に心臓手術を行わなきゃならないのか?

シルナはともかく、俺は医学知識ないんだけど。

「おい、ベリクリーデ。お前俺の中にいた『ムシ』を追い払ったじゃないか。あの不思議な光で」

と、ジュリスがベリクリーデに言った。

そうだ。その方法がある。

「あれを全員に適用すれば、わざわざオペを行わなくても『ムシ』を追い出せるんじゃないか?」

「…ほぇー…」

…無理そう。

さてはベリクリーデ…。お前、無意識だったんだな…?

「あの時は、ジュリスに忘れられて悲しい、って思って…」

「…思って?」

「…うーん。分かんない」

やっぱり無意識だったらしい。

分かるよ。追い詰められた状況だからこそ、咄嗟に身体が動くことってあるもんな。

で、後になって同じことをやれと言われても、やり方が分かんなくなってるパターン。

気持ちは理解出来る。

「そうか…。じゃあ、やっぱり全員に心臓手術するしかないのか…」

…途方もない作業だな。

でも、それで皆が正気に戻ってくれるなら。

「…やるか、シルナ」

「うん、やろう」

シルナはようやく、薄っすらと微笑みを浮かべて頷いた。

ようやく、少し希望が見えてきた。