もー駄目だ。情報量過多で、頭の中パンクしそう。

頭痛がしてきた。

「あー、はいはい分かった。そろそろ俺もキャパオーバーだから、出来るだけ簡潔に答えてくれ」

「人間の脳みその許容量って、意外と少ないんですね」

余計なお世話だ。

こんなイレギュラーな事態が続いたら、誰だってそうなるだろ。

「ともかく、イレースや生徒達が俺達を忘れたのは、お宅ら天使様のせいなんだな?」

「そうです」

「『ムシ』とかいうインチキウイルスを国中にバラまいて?」

「そうです」

「何の為に?」

「裏切り者の聖賢者殿を追い詰める為です」

ふーん。動機は至ってシンプル。

「俺とシルナはまぁ分かるけども、何でベリクリーデまで記憶から消したんだ?」

「聖神ルデスの神の器だからです」

ふーん。意味不明。

「『ムシ』に寄生されてベリクリーデのことを忘れたはずなのに、何でジュリスは元に戻ってんの?」

「それは私にも分かりかねます。恐らくそちらの、ベリクリーデとかいう聖神ルデスの写し身殿が、無意識に神の力を行使して、体内を『浄化』し、『ムシ』を追い出したのでしょう」

「ベリクリーデ、お前そんなことしたのか?」

「…ほぇ?」

ふーん。無自覚。

まぁベリクリーデはそんなことだろうと思ってた。

頼りになるんだか、そうでもないんだか…。

「それじゃ、マシュリが『ムシ』に寄生されてないのは何で?」

「神竜殿が人間ではなく魔物で、おまけに心臓が7つもあるからです」

ふーん。強い。

7つの心臓万歳。

よし、それじゃあ最後に、一番大事なことを聞くぞ。

「…どうやったら、仲間達や生徒達の記憶が戻るんだ?」

経緯はどうあれ、結局はそれが一番大事。

お偉い天使様の思惑なんてどうでも良い。どうやったらあいつらが正気に戻るのか教えてくれ。

「それは簡単なことです。『ムシ』を宿主の心臓から追い出せば良い。それで『ムシ』の支配から逃れられます」

「…ジュリスが『ムシ』を追い出して、ベリクリーデを思い出したみたいに?」

「はい」

ふーん。解決策も意外とシンプル。

あいつらの記憶喪失は『ムシ』が原因。

だから、心臓に寄生している『ムシ』を取り除けば、『ムシ』の支配から解放されて、正気に戻る。

そういう仕組みね。はいはい。

それじゃ、おまけにもう一つ聞かせてもらおうか。

「…で、その方法ってどうやるの?」

「心臓をくり抜いて『ムシ』を引っ張り出すしかありませんね」

ふーん。強硬手段。

…え?マジで言ってる?