「さっきから何度も言ってる…『ムシ』っていうのは何なんだ?ジュリスが見たっていうミミズのことか?」
「そうです。『ムシ』と呼んではいますが、非常に感染力の強いウイルスのようなものだと思ってください」
…ウイルス…。
…天使がウイルス使うのか?
「熾天使様が『ムシ』の幼生を作り出し、ラファエルとミカエルが皇王殿をけしかけて、アーリヤット皇国、及び諸外国との貿易品に紛れ込ませて、ルーデュニア聖王国の港に持ち込ませたのです」
「はぁ…?」
貿易品に紛れ込ませた、って…。
「ルーデュニア聖王国に届けられた輸入品に紛れ込ませたってことかよ?」
「はい」
しれっと「はい」って言うんじゃねぇ。一大事だろうが。
輸入品にウイルスが紛れ込んでるなんて、それもうとんだバイオテロ。
「…そういや…ルーデュニア聖王国の港に届いた荷物に、怪しいものが紛れ込んでる噂がある、って…」
と、ジュリスが思い出したように言った。
「マジで?そんなことあったのか?」
「あくまで噂だけどな。一応確認する為に、俺とベリクリーデで港を見に行ったことがある。…でも、あの時は何も見つからなかったぞ。なぁ、ベリクリーデ」
「…ほぇ?」
「…お前に聞いた俺が馬鹿だった」
…忘れてんな。完全に。
ベリクリーデの記憶力は大変怪しいが、ジュリスがそう言うのなら確かなのだろう。
「『ムシ』は小さいですから、肉眼で見ることは出来ません」
「だが、俺が今朝見たあのミミズは、大人の親指くらいの大きさだったぞ」
「それは、一度人間の体内に寄生しているからです。大気に乗って人間の体内に入り込むと、『ムシ』はその人間の心臓に寄生します」
しっ…心臓?
ウイルスが心臓に寄生するって、何処の三流バイオホラー映画だよ。
現実でそんなことになるの、マジで洒落にならないからやめてくれ。
「人間の心臓を餌に、『ムシ』は成長します。そして…心臓に循環する血液を通して、宿主の人間の脳を操ることが出来ます」
「ひぇっ…」
シルナもドン引き。
話が見えてきたぞ。
「つまりイレース達は、その『ムシ』に寄生されて脳みそ操られて、記憶をなくしたんだな?」
「そうです」
ふーん。成程。
全然納得は行かないけど、やっぱり記憶喪失はイレース達自身の意志ではなかったんだな。
得体の知れない天使産のウイルス『ムシ』に侵されたのが原因だと。
「つーことは、俺もその『ムシ』とやらに寄生されてたのか…」
「ジュリス、虫に食べられちゃったの?」
「まぁ、そんなようなもんだ…。身体の中にそんな気色悪い寄生虫がいるなんて、自分でも無自覚だったがな」
親指サイズの寄生虫が心臓の中にいたのに、全然気づかないとは。
よっぽど巧妙に隠れてるんだろうな…。
「おい、天使」
「私のことはリューイを呼んでください」
「じゃあ、リューイとやら。その『ムシ』とやらは、感染して何時間で宿主を乗っ取れるんだ?今朝起きたら俺はベリクリーデのことを忘れてたが、昨日まではちゃんと覚えてたんだ」
その通りだ。
イレース達もそう。昨日まではいつもと変わらなかった。
それなのに、今朝突然豹変していたのだ。
寝てる間に『ムシ』に感染して、そのまま脳みそ操られたってことか?
「『ムシ』が体内の心臓に寄生してから、およそ数時間の潜伏期間を経て、身体全体に『ムシ』の支配が及びます。一晩あれば充分記憶の操作は可能でしょう」
「じゃあ、昨日の夜に寄生されて、一晩かけてあの大きさまで成長したってのか?」
「そうなります」
成長速度、はやっ。
一度寄生されたらあっという間じゃないか。
おまけに、本人は全く無自覚の間に寄生されて、あれよあれよと脳みそまで操られるんだろ?
なんて恐ろしいウイルスなんだ。
「そうです。『ムシ』と呼んではいますが、非常に感染力の強いウイルスのようなものだと思ってください」
…ウイルス…。
…天使がウイルス使うのか?
「熾天使様が『ムシ』の幼生を作り出し、ラファエルとミカエルが皇王殿をけしかけて、アーリヤット皇国、及び諸外国との貿易品に紛れ込ませて、ルーデュニア聖王国の港に持ち込ませたのです」
「はぁ…?」
貿易品に紛れ込ませた、って…。
「ルーデュニア聖王国に届けられた輸入品に紛れ込ませたってことかよ?」
「はい」
しれっと「はい」って言うんじゃねぇ。一大事だろうが。
輸入品にウイルスが紛れ込んでるなんて、それもうとんだバイオテロ。
「…そういや…ルーデュニア聖王国の港に届いた荷物に、怪しいものが紛れ込んでる噂がある、って…」
と、ジュリスが思い出したように言った。
「マジで?そんなことあったのか?」
「あくまで噂だけどな。一応確認する為に、俺とベリクリーデで港を見に行ったことがある。…でも、あの時は何も見つからなかったぞ。なぁ、ベリクリーデ」
「…ほぇ?」
「…お前に聞いた俺が馬鹿だった」
…忘れてんな。完全に。
ベリクリーデの記憶力は大変怪しいが、ジュリスがそう言うのなら確かなのだろう。
「『ムシ』は小さいですから、肉眼で見ることは出来ません」
「だが、俺が今朝見たあのミミズは、大人の親指くらいの大きさだったぞ」
「それは、一度人間の体内に寄生しているからです。大気に乗って人間の体内に入り込むと、『ムシ』はその人間の心臓に寄生します」
しっ…心臓?
ウイルスが心臓に寄生するって、何処の三流バイオホラー映画だよ。
現実でそんなことになるの、マジで洒落にならないからやめてくれ。
「人間の心臓を餌に、『ムシ』は成長します。そして…心臓に循環する血液を通して、宿主の人間の脳を操ることが出来ます」
「ひぇっ…」
シルナもドン引き。
話が見えてきたぞ。
「つまりイレース達は、その『ムシ』に寄生されて脳みそ操られて、記憶をなくしたんだな?」
「そうです」
ふーん。成程。
全然納得は行かないけど、やっぱり記憶喪失はイレース達自身の意志ではなかったんだな。
得体の知れない天使産のウイルス『ムシ』に侵されたのが原因だと。
「つーことは、俺もその『ムシ』とやらに寄生されてたのか…」
「ジュリス、虫に食べられちゃったの?」
「まぁ、そんなようなもんだ…。身体の中にそんな気色悪い寄生虫がいるなんて、自分でも無自覚だったがな」
親指サイズの寄生虫が心臓の中にいたのに、全然気づかないとは。
よっぽど巧妙に隠れてるんだろうな…。
「おい、天使」
「私のことはリューイを呼んでください」
「じゃあ、リューイとやら。その『ムシ』とやらは、感染して何時間で宿主を乗っ取れるんだ?今朝起きたら俺はベリクリーデのことを忘れてたが、昨日まではちゃんと覚えてたんだ」
その通りだ。
イレース達もそう。昨日まではいつもと変わらなかった。
それなのに、今朝突然豹変していたのだ。
寝てる間に『ムシ』に感染して、そのまま脳みそ操られたってことか?
「『ムシ』が体内の心臓に寄生してから、およそ数時間の潜伏期間を経て、身体全体に『ムシ』の支配が及びます。一晩あれば充分記憶の操作は可能でしょう」
「じゃあ、昨日の夜に寄生されて、一晩かけてあの大きさまで成長したってのか?」
「そうなります」
成長速度、はやっ。
一度寄生されたらあっという間じゃないか。
おまけに、本人は全く無自覚の間に寄生されて、あれよあれよと脳みそまで操られるんだろ?
なんて恐ろしいウイルスなんだ。