――――――…命からがら、イーニシュフェルト魔導学院から逃亡し。

俺達が向かったのは、先程の、例の路地裏だった。

…また戻ってきてしまったな。…無様に。

でも、あの四人を同時に相手にして、命があるだけマシなのかもしれない。

それに今は、さっきまでいなかった仲間が二人、増えている。

「ジュリス…。それに、ベリクリーデ…」

「手加減をしろって言っただろうが。この馬鹿っ」

「だってジュリス、ドカンと一発しろって」

「比喩だ、比喩!物の例え!」

「…ひゆ?それ美味しいの?」

「あぁもう!語彙力!」
 
…えーっと。お取り込み中のところ悪いんだけど。

あんまり大声を出さないでくれ。追いかけてはきてないと思うけど。

こんなところに潜んでいると、周囲に知られない方が良いだろう。

「はぁ…。俺はお前を相手にしてると、いつも気が抜けるよ…」

「えへへ」

「褒めてないからな…」

などという、いつものジュリスとベリクリーデらしい二人のやり取りに、程よく緊張感が緩んだ。

…この状況じゃ、誰が仲間になってくれても頼もしいってもんだ。

「ジュリス君、ベリクリーデちゃん…。助けてくれてありがとうね」

シルナが、二人に礼を言った。

「ん?あぁ…。まぁ、成り行きだけどな」

「学校に来たら、三人が襲われてたから、隙を見て助けようってジュリスが」

そうだったのか。…偶然とはいえ、助かったよ。

二人が来てくれてなかったら、果たしてあの場を切り抜けられていたかどうか。

…俺が腑抜けだったせいなんだけど。

「無事で良かった。…これを無事と言って良いなら、だけどな」

「…ジュリス君…。…聞かないの?何で私達が、イレースちゃん達と戦ってたのか…」

「あぁ…。実はな、それを聞く為に俺達は学院を訪ねようとしたんだよ」

…え?

「でも、あの状況を見る限り、あんたらも俺達と同じなんだな」

「どういうこと…?」

「朝起きたら、記憶がなくなってた。聖魔騎士団の全員が、ベリクリーデと…あんたら3人のことを忘れていたんだ」

「…!?」

思わず、耳を疑った。

…何だって?