特にヤバいのは、背後を塞ぐように守っている令月とすぐりだな。

この二人の連携を、果たして崩せるだろうか?

しかも、向こうは殺す気でかかってきてるのに。

こちらは殺さず、傷つけないように気を遣わなきゃいけない。

これだけでも、数の優位なんてあてにならない。

どうする?どうすれば仲間達を傷つけずに、この場を切り抜け…、

「…よし、こうなったら。…ベリクリーデ」

「ほぇ?」

ジュリスが、くるりとベリクリーデの方を向いた。



「お前の出番だ。ドカンと一発、デカいのを頼む」

「ドカンと…?…うん、分かったー」

…え?

ジュリスに頼まれて、ベリクリーデは無邪気に前に出た。

ちょ、ちょっと待ってくれ。なんか嫌な予感が、

「良いか、手加減はしてやるんだぞ。くれぐれもやり過ぎないように、」

と、ジュリスが忠告しようとしたのに、ベリクリーデは全く聞いていなかった。

あっという間に、ベリクリーデは巨大な魔力の爆弾を生成。

その巨大な魔力爆弾を、イーニシュフェルト魔導学院の職員室の床に叩き込んだ。

「どっかーん」

「手加減しろって言っただろうがぁぁ!!」

ジュリスの悲鳴のような叫び声を聞きながら、俺とシルナは思わずその場に伏せた。

凄まじい威力の魔力爆弾が炸裂し、地震が起きたのかと思うほど、建物全体が激しく揺れた。

令月もすぐりもイレースも天音も、これには咄嗟に動けなかった。

そしてその隙を、マシュリは見逃さなかった。

「乗って!」

ケルベロスに『変化』したマシュリが、そう叫んだ。

あ、そ、そうか。

俺は懸命に手を伸ばし、マシュリの背中にしがみついた。

背中に俺とシルナ、そしてジュリスとベリクリーデを乗せ。

マシュリは、窓を突き破って外に飛び出した。

あとは、一目散に学院の敷地内から逃げ出した。





…こうして、俺達は本日再び、自分の学院から無様に逃げ出したのだった。