四人共、一切容赦はなかった。

俺達を傷つけることに、全く躊躇いはない。

「くっ…!」

ともかく応戦しなければ、と杖を握り締めたが。

俺にとって、目の前にいるのは仲間だった。

俺のことを忘れていたとしても、仲間であることは変わらない。

敵なんかじゃない。これまでずっと、一緒に毎日を過ごしてきた仲間。

仲間を傷つけることは、どうしても出来なかった。

躊躇いが、俺を鈍らせた。

その隙を、天音は見逃さなかった。

寸分違わず、天音の刃が俺の顔面に迫った。

「羽久!」

「…!」

悲鳴のようなシルナの声にハッとして、我に返った時にはもう遅かった。

次の瞬間には、天音の剣に切り裂かれる。

…しかし、そうはならなかった。

天音の剣が、俺に届くその一瞬前。

赤黒い刀身の剣が、天音の剣を受け止めたからだ。

「…!?」

受け止められた自分の剣に、赤黒い毒のようなものがじわじわと侵食するのを見て。

天音は、咄嗟に剣を振り払った。

「…また増えた…。…今度は誰?」

「…危ないところだったな」

俺は、突然目の前に現れたその人物に、目を見開くしかなかった。

その人物というのは、赤黒い剣を持った…。

「ジュリス…!?」

「ジュリスだけじゃないよ」

背後から、ひょこっと顔を覗かせたのは。

ジュリスの相棒の、ベリクリーデだった。

こ、この二人が何でここに。

「お前達…!一体、何でここに?」

「話は後だ。ボサッとしてる暇はないぞ」

ジュリスは、改めて天音と向き合った。

「まずはこの場を切り抜ける。お前も、もう躊躇うな」

「…」

躊躇うな…か。

無茶なことを言う。

…でも、ジュリスの言う通りだ。

腹を決めなくては。まずはこの場を切り抜けて、態勢を立て直して、改めてまた戻ってくる。

仲間を傷つけたくないからって躊躇っていたら、俺達が先に殺されてしまう。

思い出してもらうどころじゃない。

…それだけは避けなくては。

「…分かった。…覚悟を決めるよ」

「よし」

俺も、強く杖を握り締めた。

何がどうなって二人が来てくれたのか分からないが、ジュリスとベリクリーデが加勢に来てくれたのは有り難かった。

向こうはナジュを除いて四人、こちらは俺とシルナ、マシュリ、そしてジュリスとベリクリーデの五人。

一気に、形勢逆転だ。

…だが、油断は出来ない。

こちらが数で勝っていても、全く安心出来ないのだから、俺の仲間達は強過ぎる。