…天変地異か何か?

これには、シルナもびっくり。

「珍しいな、イレースが簡単に許すなんて…」

いつもなら、説教が始まるところだったろうに。

「今の私は機嫌が良いんです。念願の抜き打ち試験を行うことが出来ましたからね」

とのこと。

あー、成程。はいはい、そういうことね。

生徒達が沈み込んでる一方、念願の抜き打ち試験を実施出来たイレースは、達成感でいっぱいだと。

残酷。

「今回の試験をモデルケースに、定期試験の他に、年に何度かこのような抜き打ち試験を実施したいですね。生徒達の気を引き締めるのに、これほど良い機会はありません」

「そ、そうか…」

年に数回?マジで?そんなにやるの?

生徒は泣くだろうな…。

ごめんな。そこは俺達教師仲間が、「それはさすがにやり過ぎじゃないか」と言って止めるべきなんだろうけど。

俺も命が惜しいからな。言えない。

すると。

「い、い、イレースちゃん。さすがにや、やり過ぎじゃないの?もうちょっと、せめてもうちょっと簡単な試験を、」

俺より度胸があるらしいシルナが、俺の背後に隠れたまま、恐る恐る女王様に意見した。

おぉ。やるなシルナ。

だが、そんなシルナの必死の勇気は、

「これ、今日学院に届いた郵便物です。全部目を通しておいてくださいね」

「ひ、ひゃいっ」

あまりにも、あっさりとスルーされた。

…シルナでも駄目だったか。

仕方ない。シルナと言えども、女王様に逆らったら恐ろしい制裁が待ってるからな。

「それでは、私はこれで」

郵便物を手渡すなり、イレースはさっさと学院長室を出ていった。

…ごめんな、生徒達。止められなくて。

せめてチョコレートの袋詰めくらいは、俺も手伝わせてもらったからさ。

それくらいじゃ元気は出ないと思うけど、このチョコが少しでも生徒の心を慰めることを祈るばかりである。