――――――…ナツキ皇王が口を滑らせたという、「次の矢」が何なのか気になるところだが。

正直なところ、僕はもう…彼のことに関しては、あまり気にしていなかった。

今回の決闘の件で、それがよく分かった。

ナツキ皇王が何を企んでいたとしても、所詮彼の浅知恵では。

シルナ・エインリー学院長と、彼の作った盤石なルーデュニア聖王国には敵わない。

学院長は謙遜しているけれど…。僕はそう思う。

…いや、違うか。

ナツキ皇王の「次の矢」のこと以上に、他に心配していることがあるのだ。

それは…僕個人の理由。

先の決闘で、竜の姿を…決して許されない、罪の姿を白日の下に晒してしまった。

一度は竜族を撃退したけれど、彼らは罪人の僕を許さない。

いずれまた、冥界より現れるだろう。…僕の罪を罰する為に。

僕の命はどうなっても良い。僕が犯した罪なのだから、僕が咎められるのは当たり前たのだ。

ただそうなった時、学院長達の命まで危ぶまれるんじゃないか。

それが心配だった。…とても。

…もう二度と、僕は自分の罪のせいで、誰かの未来を奪いたくはない。傷つけたくはないのだ。

神竜族がいつ、また冥界から現れるか。

それは今日かもしれないし、明日かもしれない。

冥界の時間の流れは現世のものとは違うから、もしかしたら、もっと何年も先のことになるかもしれない。

でも、いずれ必ず「その日」は来る。罪の裁きが下される時が。

果てしてその時、僕はどうなるのだろう。

僕を仲間だと言ってくれたあの優しい人々を、守ることが出来るだろうか。

敢えて仲間達には何も言わず、気にしていない風を装ってはいるが。

僕はずっと、そのことが心配で堪らなかった。