「よく戻ってきてくれました。元気でしたか?何か困ったことはありませんでしたか?」
「お気遣い、ありがとうございます。何も問題はありません」
「そうですか。良かったです」
本当は、そのようなことを私にわざわざ尋ねる必要はないのだ。
私はもとより、智天使様の目であり耳であり、手足である存在。
智天使様はいつでも、私と感覚を共有し、私と同じものを見て、同じものを聞くことが出来る。
それでも私に問いかけてくださるのは、智天使様が心から私を気遣ってくれているという、何よりの証拠だった。
…やはり、この御方はお優しい。
聖神ルデス様に仕える上位天使の一人とは、とても思えないほどに。
「ご命令通り、裏切り者の聖賢者殿を観察してきました」
「ありがとうございます。苦労をかけましたね」
「とんでもない。あなた様のご命令なら、いつでも、どんなことでも」
あなたはただ、自分の手足を動かすように私に命じれば良い。
そうすれば私は、あなたの手足となって、どんなことでもやってみせるだろう。
「智天使様こそ、私がいない間、何もありませんでしたか?」
「えぇ。大丈夫ですよ」
もし何かあったとしても、智天使様は私に心配をかけないよう、黙っているだろう。
そういう方だ。誰よりもお優しいから。
このような緊迫した状況だからこそ、せめて少しでも肩の力を抜いて欲しい。
「僭越ながら、智天使様にお土産をと思いまして…」
「お土産、ですか?」
「地上で買ってきました。ホワイトチョコレアチーズケーキだそうです」
私は何もない空間から、白いケーキボックスを取り出した。
この間、聖賢者殿に献上したのと同じ品である。
あまりにも美味しそうにこのケーキを食べ、おまけに敵であるはずの私にさえ勧めてきた。
人間の食べ物とは如何なるものか、と思いながら口にしてみたところ。
意外なほどに美味だったので、智天使様へのお土産にどうかと思った次第である。
「ホワイトチョコ…レアチーズ、ケーキ?何だか長い名前ですね…」
「これが人間の間で、と言うか聖賢者殿の中で流行っているそうです。どうぞ、試しに」
「あ、ありがとうございます…。何事も経験ですね。それに、リューイがわざわざ用意してくれたものなら、無碍にすることは出来ません。…いただきます」
「はい、どうぞ」
恐る恐る、といった風に。
智天使様は、ホワイトチョコのレアチーズケーキを口にされた。
…さて、どうでしょう。
「如何ですか?智天使様」
「…!美味しい…!」
と言って、智天使様は目を輝かせた。
そうですか。それは何より。
お土産にして良かったです。
「人間界には、このような美味しいものがあるのですね。初めて知りました」
「私もです。魔導師も天使と同じように、食事は必要ないはずなのですが…。聖賢者殿曰く、これを食べたら幸せな気持ちになれる、嗜好品なのだそうです」
「な、成程…。そのような考え方もありますね」
「それから、もう一つ」
もう一度、私は何もない空間から、もう一つのお土産を取り出した。
「えぇっと…。そちらは?」
「猫用ちゅちゅ〜る、プレミアムマタタビ味だそうです」
「えっ」
こちらは、言わずもがな、神竜殿に献上したものである。
「神竜殿が、あまりにも恍惚としてこれを舐めていたので…。さぞや美味しいに違いないと思いまして」
「そ、そうですか…。し、神竜族なのに猫のおやつを食べるんですか…?」
それは永遠の謎ですね。
半分ケルベロスが混じっているからでしょうか。…ケルベロスは犬ですが。
「お気遣い、ありがとうございます。何も問題はありません」
「そうですか。良かったです」
本当は、そのようなことを私にわざわざ尋ねる必要はないのだ。
私はもとより、智天使様の目であり耳であり、手足である存在。
智天使様はいつでも、私と感覚を共有し、私と同じものを見て、同じものを聞くことが出来る。
それでも私に問いかけてくださるのは、智天使様が心から私を気遣ってくれているという、何よりの証拠だった。
…やはり、この御方はお優しい。
聖神ルデス様に仕える上位天使の一人とは、とても思えないほどに。
「ご命令通り、裏切り者の聖賢者殿を観察してきました」
「ありがとうございます。苦労をかけましたね」
「とんでもない。あなた様のご命令なら、いつでも、どんなことでも」
あなたはただ、自分の手足を動かすように私に命じれば良い。
そうすれば私は、あなたの手足となって、どんなことでもやってみせるだろう。
「智天使様こそ、私がいない間、何もありませんでしたか?」
「えぇ。大丈夫ですよ」
もし何かあったとしても、智天使様は私に心配をかけないよう、黙っているだろう。
そういう方だ。誰よりもお優しいから。
このような緊迫した状況だからこそ、せめて少しでも肩の力を抜いて欲しい。
「僭越ながら、智天使様にお土産をと思いまして…」
「お土産、ですか?」
「地上で買ってきました。ホワイトチョコレアチーズケーキだそうです」
私は何もない空間から、白いケーキボックスを取り出した。
この間、聖賢者殿に献上したのと同じ品である。
あまりにも美味しそうにこのケーキを食べ、おまけに敵であるはずの私にさえ勧めてきた。
人間の食べ物とは如何なるものか、と思いながら口にしてみたところ。
意外なほどに美味だったので、智天使様へのお土産にどうかと思った次第である。
「ホワイトチョコ…レアチーズ、ケーキ?何だか長い名前ですね…」
「これが人間の間で、と言うか聖賢者殿の中で流行っているそうです。どうぞ、試しに」
「あ、ありがとうございます…。何事も経験ですね。それに、リューイがわざわざ用意してくれたものなら、無碍にすることは出来ません。…いただきます」
「はい、どうぞ」
恐る恐る、といった風に。
智天使様は、ホワイトチョコのレアチーズケーキを口にされた。
…さて、どうでしょう。
「如何ですか?智天使様」
「…!美味しい…!」
と言って、智天使様は目を輝かせた。
そうですか。それは何より。
お土産にして良かったです。
「人間界には、このような美味しいものがあるのですね。初めて知りました」
「私もです。魔導師も天使と同じように、食事は必要ないはずなのですが…。聖賢者殿曰く、これを食べたら幸せな気持ちになれる、嗜好品なのだそうです」
「な、成程…。そのような考え方もありますね」
「それから、もう一つ」
もう一度、私は何もない空間から、もう一つのお土産を取り出した。
「えぇっと…。そちらは?」
「猫用ちゅちゅ〜る、プレミアムマタタビ味だそうです」
「えっ」
こちらは、言わずもがな、神竜殿に献上したものである。
「神竜殿が、あまりにも恍惚としてこれを舐めていたので…。さぞや美味しいに違いないと思いまして」
「そ、そうですか…。し、神竜族なのに猫のおやつを食べるんですか…?」
それは永遠の謎ですね。
半分ケルベロスが混じっているからでしょうか。…ケルベロスは犬ですが。