わざわざ話をややこしくしやがって。

マシュリを殺害したのは、ここにいるリューイの意志と言うより、リューイのご主人様の意志…。

「で、ご主人様が殺し損ねたマシュリの命を、部下のお前が今度こそ奪いに来たのか?」

「いいえ。神竜殿に手を出すつもりはありません」

どうだか。

智天使様の意志はお前の意志なんだろ?だったら、その智天使様の一存で、全てが左右される。

もう一回、お前がマシュリを襲わない保証が何処にある?

「智天使様は、あなた方の真意を確かめたがっておられる。裏切り者たる聖賢者殿が、何故命の危険を犯して冥界に足を踏み入れたのか。その理由を」

「そんなこと…」

わざわざ聞いて、確かめるようなことじゃないだろ。

「その為に、あなた方を近くで観察するよう、智天使様は私にお命じになりました」

「…!それで、親交を深めるとか何とか言って…」

「はい。しばらくの間、ここで皆さんを観察させていただきます」

…いや、天使に見張られてるなんて冗談じゃねぇ。

と、言いたかったが。

「ご安心ください。皆さんに危害を加えろという指示は、一切受けていません。私は、ただあなた方を見守るだけです」

「…」

「それでは皆さん、これからしばらく宜しくお願いします」

本当にお前、天使か?と。

疑いたくなるような、胡散臭い笑顔だった。