「聞いたことあるか?シュニィ。天使なんて種族」

「えっ、あっ、は、はい」

現実が呑み込めないみたいな顔をして、ずっと黙っていたシュニィに話を振ってみると。

「さすがに実在するとは思っていませんでしたが…。以前、歴史の文献を読んでいる時に、天使に関する記述があった気がします…」

…そうなのか?

博識なシュニィが言うことなら、信用出来る。

「確か…。聖戦の時代、聖神ルデスを支える3人の天使がいた、と…」

「聖戦の時代…」

…ってことは、シルナがイーニシュフェルトの里で聖賢者をやってた頃に…。

「じゃあ、シルナは知ってるんじゃないのか。シルナ、こいつと面識があっ、」

「ふわぁぁぁ〜!濃厚なチョコソースたっぷり…」

「話を聞け!」

ケーキ食ってる場合じゃねーだろ。真面目な話だぞ。

イレースに黒焦げにしてもらおうか。

「天使!こいつ!聖神ルデスに仕える天使!なんだって!」

「えっ。そ、そうなの?」

シルナもびっくり。

「本当なのか?天使なんて実在するのか…!?」

「え、えぇっと…。確かに…私は見たことないけど、聖戦の時代に、聖神ルデスが天使を遣わしたって話は聞いたよ」

マジなのかよ。

「じゃあ、こいつがその天使?3人の天使のうちの一人…」

「それは3人の上位天使様のことでしょう。私は下位天使たる七大天使の一人。その3人の上位天使のうちの一人、智天使ケルビム様に仕える"大天使アークエンジェル"サリエルです」

うわぁ。なんかもう、意味が分かんなくなってきた。

説明してくれてるんだろうけど、そのややこしい説明のせいで余計に頭がこんがらがってくる。

「ややこしい。三行でまとめてくれ」

「天使。本物。宜しく」

「よし」

実に分かりやすい三行だった。ありがとう。

ツッコむ気も失せてきた。もうこいつ、天使ってことで良いや。

そういう種族が存在していたっていうのは、シュニィとシルナの話を聞くに、確かな情報なのだろう。

しかし…そうするとリューイは、聖神ルデスの手の者ってことだろう?

「…つまり、やっぱり俺達の敵ってことじゃないか」

俺の中には、聖神ルデスと対を為す…邪神イングレアの魂が宿っている。

互いに決して相容れない、光と闇の神。

「おおかた、聖神ルデスの命令を受けてシルナや、俺を始末しに来たのか?」

「天使はもとより、聖神ルデス様の創りし道具。しかし私は、聖神ルデス様ではなく、智天使ケルビム様にお仕えする天使です」

と、リューイは答えた。

「聖神ルデス様より、我が主たる智天使様の御意志を優先します」

「へぇ?じゃあ、お前がここに来たのも、その智天使様とやらの命令なのか?」

「そうです。智天使様は、裏切り者たるイーニシュフェルトの聖賢者と、その仲間達の真意を確かめたいと仰っていました」

裏切り者…シルナのことか。

シルナと、そのシルナの仲間である俺達に会いに来たんだな。

「…ちょっと待って。それじゃあ、マシュリさんを殺そうとしたのは…」

天音が気づいて、声をあげた。

「はい。そこにいる神竜殿を殺害したのは、他でもない我が主、智天使ケルビム様です」

「…。…お前、ついさっき自分が殺したって言わなかったか?」

「智天使様の御意志は私の意志。智天使様が手を下されたなら、それは私が手を下したも同然です」

あぁそう。そういう意味。

主と自分は一心同体。だからマシュリを殺したのも自分。

そう言いたい訳だな?