天使?天使って言った?今、こいつ。

天使を自称するなんて、お前は何歳まで中二病やってんだ?

「…大人の中二病には付き合ってられないんだがな?」

「どういう意味ですか、中二病というのは」

そりゃこっちが聞きてぇよ。

「少し待ってください。調べます」

そう言って、リューイは何もない空間から、一冊の分厚い本を取り出した。

何だ?あの本…。

リューイはその本を開き、ぺらぺらと捲った。

「ふむ、成程…。中二病…。思春期の少年少女が陥る妄想…。…病と書いてありますが、病気ではないのですね」

…辞書?それ、辞書引いてんの?

…辞書持ち歩いてんの?

「理解しました」

パタン、と本を閉じるリューイ。

「私の発言が虚言、あるいは妄想ではないかと疑っておられるようですが、私は正真正銘天使です」

「中二病拗らせた奴はな、大抵そう言うんだよ」

「信じてもらえないようですね。…では、どうすれば信じてもらえるでしょう」

どうすれば、って…。

天使…天使と言えば…。

「そうだな…。じゃあ…天使だって言うなら、天使の羽根とか生えてるんじゃないのか」

「そうですね」

「その羽根を見せてみろよ」

「普段は必要ないので、羽根は隠しているのですが…。それで信じてもらえるなら、良いでしょう」

そう言うなり。

リューイの背中に、真っ白い4枚の羽根が広がった。

わー…。すげー…。

「おぉー。ふわふわしてる」

「羽根って痛覚あるの?毟ったら痛い?」

「人間で言う、髪の毛と同じようなものです」

恐れ知らずの令月とすぐりが、すかさずリューイの羽根に触っていた。

恐る恐る俺も触ってみたが、羽毛みたいにふわふわ。

へぇ…。本当に天使の羽根みたいだ。

「他にはどうしましょう?どうしたら私が天使であることの証明になりますか?」

「え?えーと…そうだな…。じゃあ、その羽根…飛べるのか?」

「勿論です」

リューイは、その場にふわりと飛んでみせた。

おぉー、すげぇ…。飛んでる…。

羽根がある…。飛べる…。

「…お前、本当に天使なのか?」

「だから、そうだとさっきから言ってます」

ふーん…。まるで、本物の天使みたいだな…。

…マジなの?