俺は、未だに警戒心を一切解いていないが。

シルナは。

「ふわぁぁぁ〜!うま〜っ!!」

満面の笑み、最高にご満悦な様子で、例のチョコスフレケーキをぱくついていた。

…幸せそうで何より。

「うん、やっぱり美味しいですねこれ」

不死身で怖いもの知らずのナジュも、当たり前のように食ってるし。

更に。

「凄く柔らかいね、これ」

「うん。ツキナにも食べさせてあげたかったなー」

ナジュに負けず劣らず、怖いもの知らずの令月とすぐりまで、普通に食べてる。

お前ら、ついさっきまでそのケーキをくれた敵の手首を切り落としたり、指を折ったりしてた訳だが。

そのことはもう忘れたのか?

「喜んでいただけたようで何よりです」

で、こっちの謎の不審者も、微笑ましそうにシルナ達を見つめているし。

…結局、こいつは何者なんだよ。

「時魔導師殿もどうですか?」

俺の睨むような視線を感じたのか、微笑みを浮かべたままケーキを取り分けた小皿をこちらに差し出した。

…ふざけんじゃねぇ。

「シルナを懐柔するのは簡単でも、俺はそうは行かないぞ」

俺はシルナと違って、チョコケーキくらいじゃ絆されないからな。

「そうですか」

「お前、一体何者なんだ?マシュリを殺したのはお前だって…」

「僕を殺したのは、その人じゃないよ。…雰囲気は似てるけどね」

すかさず、マシュリがそう答えた。

…それは良いんだけども。

「…マシュリ、何でお前までケーキ食ってんだよ…!?」

お前、自分がこいつに殺されかかったこと理解してるのか?

何で普通に食べてんの?

「え?だって…。仮に毒が入ってたとしても、毒程度で僕は死なないし…」

「だからって食うなよ…!」

怖いもの知らず多過ぎだろ。このパーティ。

…あぁ、もう頭痛くなってきた。

「…さっきお前、俺達と親交を深める為に来たって言ったよな?」

俺は、その謎の男に聞いた。

「言いましたね」

じゃあはっきりさせよう。

「それなら、お前の素性を話せよ。お前は何者なんだ?魔物じゃないんだよな?…マシュリを殺したのも、お前じゃ…」

「質問が多いですね」

「良いから答えろ。お前は何者だ?」

「隠すつもりはありません。包み隠さずお話しますよ…。私の名はリューイ。我が主に賜った名です」

リューイ。

これで、この謎の男の名前が明らかになった。

「で?そのリューイさんは何なんだ。人間でも、魔物でもなく…」

「"七大天使アークエンジェル"の一人。天使です」

「ふーん。天使…」

天使、天使ねぇ。納得…。

…。

…って、納得出来る訳ねーだろ。

「はぁぁぁっ!?」

俺は、思わずデカい声をあげてしまった。