その後。

皆が再び学院長室に集まったのは、下校時刻が過ぎてからだった。

ようやく、やっとこれで本題に入れる…。

…と、思ったのも束の間。

「食べて欲しかったなー…。チョコどら焼き…」

シルナは相変わらず、生徒達にチョコどら焼きを食べてもらえなかったことを悔しがっていた。

おい。それどころじゃないだろ。今は。

「あっ、そうだ…。明日の朝ご飯のデザートに、チョコどら焼きを出そう!」

「やめろ」

何が嬉しくて、朝からどら焼き食べなきゃならないんだ。

重いわ。

更に、呑気なのはシルナだけではなく。

「ねぇ。猫の集会って、どんな話をするの?」

「集会?あぁ…色んな話をするけど、今日は新発売の猫缶の話だったよ。ツナマグロ味が美味しいんだって」

令月の問いに、マシュリが答えた。

おい。そんな話どうでも良いだろ。

ってか、それ、わざわざ集まって話さなきゃいけないようなことなのか?

「猫のしゅーかいって、何処でやってるの?」

「それは人間には教えられないな…。猫同士の秘密だから」

「えー。ケチだなー」

…お前も人間だろ、とツッコみたかったが、もうそんな元気もなかった。

こうなったらイレース。そう、俺にはイレースがいる。

「イレース…。こいつらにガツンと言ってやってくれ」

「そうですね…。では言わせていただきますが」

イレースは、この場に集まった教師陣をさっと見渡して。

「来月の定期試験の問題用紙、さっさと提出してくださいね」

と、言った。

…そうじゃないだろ。

「試験のことどうでも良いだろ、今は…!」

「私にとっては最重要事項です。印刷するのに時間がかかるんですから、さっさと作ってもらわないと。特に学院長」

「な、何で私?」

「毎回ギリギリだからですよ。生徒でさえ試験の前は早くから準備をするというのに、学院長であるあなたの方が準備が遅いって、どういうことです?生徒の爪の垢を煎じて飲んだらどうですか?」

「うっ…」

痛いところを突かれたらしいシルナ。

言い返せないよな。毎回定期試験の度に、ギリギリまで問題作りでヒーヒー言ってる。

試験前に困らないように、早めに準備しとけって言ってるのに。

って、そんなことはどうでも良いんだよ。そりゃ試験も大切だけども。

ルーデュニア聖王国の安泰が保証されなかったら、試験どころじゃなくなるんだぞ。

誰も言わないなら、もう俺が言わせてもらうぞ。

「俺が聞きたいのは…『会談』のことだよ。ナツキ皇王とフユリ様の。あれはどうなったんだ?」

それを先に言ってくれよ。

シルナは立ち会ってきたんだろう。あの会談に。

「フユリ様はなんて?ナツキ様はなんて言ってたんだ?」

俺はここぞとばかりに、シルナを問い詰めた。

心配しながら待ってたんだからな。俺は。

「えーっと…。うーん…」

早速言葉に詰まるシルナ。

何?その煮え切らない返事。

不穏なんだけど?