…と。

しんみりしてしまったが、今はそれどころじゃないんだったと思い出した。

「そうだ。ガイコツ…!」

「ガイコツ?」

今頃、ガイコツ軍団と戦っているであろうシルナ達のことを思い出して、ハッとした。

何もかも終わった気になってるが、まだ終わってないぞ。

冥界から連れて帰ってしまった「お土産」を何とかしなければ、安心して『門』を閉じられない。

「えぇっと…。説明するのが難しいが、俺達、ガイコツを現世に連れてきちゃったんだよ」

「…全く意味が分からないけど、要するにピンチなんだね?」

「そ、そういうことだ」

ごめんな。上手く説明出来なくて。

でも、ゆっくり説明している暇はない。

急いでシルナ達のもとに戻らなくては。

「マシュリ、お前はここで待っててくれ。俺はシルナのところにもどっ…」

「僕も行くよ」

え?

「僕の為に戦ってくれてるんでしょ?それなら、僕も手を貸すよ」

えぇ?

手を貸してくれるのは有り難いけど、でも…。

「いや、でも…!お前、病み上がり…って言うか、死に上がり…?なのに、動き回ったりしたら…」

身体、まだ本調子じゃないんじゃないのか。 

7つ目の心臓は戻ったけれど、他の6つの心臓はまだ再生出来てないんじゃ…。

「ケルベロスの再生能力を見くびってもらったら困るね。心臓が一つでも動いていれば、再生は容易い」

「で、でも他の心臓はまだ…」

「とっくに戻ってるよ。7つ全部」

はやっ!

そんな超速度で再生すんのか?ナジュを超えてるじゃないか。

「だから、僕も行く」

「…分かった。でも、無理をするなよ」

「さっきまで散々無理をしてきた人達が、よく言うよ」

ごもっとも。

お前が言うな、って感じだな。

「学院長達のところに行けば良いんだよね」

「へっ?」

そう言うなり、マシュリは神竜バハムートの姿に『変化』した。

すげぇ。あの老神竜と同じ、神々しい竜の姿。

これがマシュリの…神竜バハムートとしての姿。

そのマシュリが、俺の首根っこをパクリ、と口に咥えた。

「!?」

「ふははっへて(捕まってて)」 

まさか、この状態で行くのか?

ちょ、俺自分の足で走るから、降ろし、

「ひほう(行こう)」

「はぁぁぁぁ!?」

俺を口に咥えた状態で、マシュリは竜の翼を羽ばたかせた。

神竜マシュリタクシー、ここに爆誕。

…せめて、口に咥えるんじゃなくて、その立派な背中に乗せてくれよ。