―――――――…目の前の光景が信じられなかった。

望んでいた瞬間だった。それでも…やっぱり、信じられない。

死んだはずの命が、再び蘇るなんて。

マシュリが手に取ると、赤い心臓はマシュリの身体に吸い込まれるように消えていった。

…大丈夫、なのか?

それで、身体の中に心臓が戻ったことになるのか?

てっきり、胸をメスで裂いて、心臓移植しなければならないのかと思っていたけど…。

その必要はないのだろうか。

「…マシュリ…?」

マシュリなんだよな?生き返ったんだよな?

…俺達、これで良かったんだよな?

「…君達は、本当に無謀なことを考えるね」

マシュリは微笑みを浮かべて、こちらを振り向いた。

あ…マシュリだ…。

本当に…生き返ったんだ。マシュリが…。

「生き返ったんだよな…?」

「そうだね」

「…!良かった…!」

思わず、腰が砕けてしまいそうになった。

どれだけ心配したと…お前は…。

「僕の為に、どれほど危険なことをしたか…。君達は分かってないんだよ。危ない綱渡りどころじゃなかったんだから」

…蘇って早々、説教かよ。

何でも良いよ。マシュリが戻ってきたんだから、それで。

「…俺達に黙って、勝手に死ぬお前が悪いだろ…」

「確かに。…あまり強くは叱れないね。全部、僕の為にしてくれたことなんだから」

あぁ、そうだよ。

全ては、この瞬間の為だ。

一体何度、何人の仲間が死にかけたことか。

でも、その全てがたった今、報われた。

…それに。

「…助けてくれただろ?マシュリも」

「…」

それを忘れたとは言わせないぞ。

「俺達が冥界で迷ってた時、猫の姿で導いてくれたじゃないか」

「…あ…。あれは…」

「お陰で戻ってこられたよ、マシュリ。ありがとう」

あの導きがなかったら、今頃どうなっていたことか。

未だに、ベリクリーデと一緒に最初に迷い込んだ古代遺跡をうろうろ彷徨ってたと思うぞ。

そうならずに済んだのは、マシュリが俺達を竜の祠に導いてくれたから。

そして、最後のピラミッドから、現世に繋がる道を開いてくれたの。

あれも、マシュリなんだろ?きっと…。

「そんな…。あれは、スクルトが僕に…。…礼を言うのはこっちだよ」

「そうか」

「…ありがとう。僕をこの世界に呼び戻してくれて…。お陰でこれからは、全力で君達に恩返しが出来る」

そりゃ嬉しいな。

思う存分、恩返ししてくれ。…長生きしてな。

それが一番の恩返しだ。