「皆さん…!大丈夫ですか。怪我は…?」

慌てて、シュニィがこちらに駆け寄ってきた。

「あぁ…。俺の下敷きになったシルナと、ルイーシュの下敷きになったキュレムが腰を痛めたくらいで、あとは無事だ」

「あと、僕の地下足袋が巨人の胃液で溶けただけだよ」

俺が先に答え、令月が付け加えた。

…胃液…?

「そ、そうですか…。ともあれ、皆さんご無事で…」

「あぁ…。そっちは大丈夫だったか?」

「…はい。吐月さんを始めとして…。皆さんが力を貸してくれました」

俺達が無事に冥界から帰る為に、ずっと『門』を開き続けてくれていた吐月。

そして、その『門』を維持する為に力を貸してくれた仲間達。

誰の表情にも、疲労と安堵が浮かんでいる。

その顔を見れば分かる。

…頑張ってくれたんだな。皆…。

「ありがとうな…。俺達が無事に戻ってこられたのは、皆のお陰だよ…」

こんな簡単な言葉だけでは、とてもじゃないが感謝を現すことは出来ないけど。

とにかく、まず一番にそう言いたかった。

「それで?感動の再会してるところ悪いけど、目的は果たしたの?」

と、ルディシアが尋ねた。

目的?そうだ。

「マシュリさんの心臓は?見つかったんですか?」

「あぁ。ここに…」

俺は、懐に入れて大事に持ち運んできた、手のひらほどの大きさの、真紅の石を取り出した。

これが、マシュリの心臓…。

「えっ…!」

「…!」

その真紅の心臓が、突然石を持ったように浮き上がった。

な、何なんだ?

浮き上がったかと思うと、心臓は凄まじい勢いで何処かに飛んでいった。

「えっ、えぇぇっ!?」

「し、心臓が勝手に…!?」

嘘だろ。意志を持ってるとでも言うのか。

あとはこの心臓を、マシュリの遺体に戻すだけ…と、すっかり気を緩めていたのが仇になった。

ちょ、何処に行くんだマシュリの心臓。

急いで追いかけなくては…。

と、立ち上がりかけたその時。

「ひょぇぇぇ!羽久助けてぇぇ!」

俺の下敷きになっていたシルナが、俺にしがみついてきた。

「ちょ、何だよいきなり!?」

今それどころじゃないんだよ。飛んでったマシュリの心臓を取り返さな…きゃ…。

「…!?」

振り向いて目に入った「ソレ」に、俺は目を疑った。

俺だけではなく、シュニィや吐月達も驚愕に目を見開いていた。

冥界と現世を繋ぐ『門』。俺達が転送されてきた、その赤黒い裂け目から。

無数のガイコツの群れが、「こちら側」に手を伸ばしているではないか。

…やべぇ。連れてきちゃった…。