しかし、この不思議な世界は、俺達をそう簡単に帰すつもりはないようだった。

しばらく歩き続けて、歩きにくい砂地と、歩く度に立ち上る砂ぼこりに辟易し。

いい加減うんざりしてきた頃に、ようやく辿り着いた。

「…いかにも…って感じだな」

「う、うん…」

砂地のど真ん中に、深く青々とした水の湖。

その周りに、ヤシの木みたいな植物が生い茂っていた。

更にその近くに、崩れかけた遺跡と、石を積み上げた塔のようなものが建っていた。

塔は、中途半端な高さで切り取られ、途中ですっぱりと途切れていた。

崩れたのか?…壊されたのか?その割には、ちっとも瓦礫が落ちていないが…。

「集落っちゃあ集落だが…。…人の気配はないな」

冥界だから、人じゃなくて魔物だが…。

「かつては、ここに都市があったんでしょうね」

こんな砂漠のど真ん中にな。

…しかも、見つかったのは遺跡だけではない。

巨大な、ピラミッドのような建物の残骸まである。

マジかよ…大昔にタイムスリップしたみたいだ。

…しかも。

「うわっ…。何だ、これ…」

俺は湖の畔まで来て、思わずぎょっとした。

「ど、どうしたの…?羽久…」

「見てみろよ、この水の中…」

「…ひぇっ…」

ビビリチキンなシルナは、「それ」を見るなり、悲鳴を上げて俺の背中に隠れた。

湖の底には、白いものがびっしりと埋め尽くされていた。

石灰か、砂かと思ったが…そんな可愛いものじゃない。

骨だ。

大小様々の白い骨の欠片が、湖の底を埋め尽くしていた。

…墓なのか?ここは…。

…しかも、湖の周囲には、不思議な…と言うか、不可解なものがたくさん落ちていた。

「ジュリス、これ何だろう?」

「…?ガラスの破片…だな。やけにたくさん散らばってるが…」

まるで、この場所で巨大な窓ガラスを粉々に壊しでもしたように。

大量のガラスの破片が、無数に散らばっていた。

うっかり踏み抜くと、足を怪我しそうだ。

骨にもビビるけど、ガラスの破片も不気味だぞ。

あまりにも、砂漠に不釣り合いって言うか…。

この場所に、かつて集落があったのはほぼ確かだろう。

多分…相当発達した文明があったんじゃないか?そうでなければ、あんなに器用に石を積み上げて、塔を造ろうとはしないだろう。

「…何だか、さっきもこんなもの見せられたな」

俺は、思わずポツリとそう呟いてしまった。

「…羽久、どういうこと?」

「いや…ベリクリーデと一緒に別行動してた時に…」

「確かに、ちょっと似てるね」

俺と同じものを見たベリクリーデも、俺の言葉に同意した。

俺達が冥界に来てから、最初に送り込まれた場所。

あの、謎の古代都市…の、遺跡の跡地みたいな場所。

あの場所にそっくりな気がする。