――――――…竜の祠を守る老神竜から、マシュリの心臓を取り返すと。

竜の祠は、跡形もなく消えてしまった。

…それは、良いのだけど。

「…何処だ?ここ…」

「…分かんない…」

ついさっきまで、洞窟があったよな?

祠が崩れ去ったと思ったら、今度は。

植物の一本も見つからない、見渡す限りの…。

…砂漠。

いや、そうはならんやろ。…って言いたい。

なってるけどな。

「どうせなら、現世まで送ってくれれば良いのに…。不親切だね」

「家に帰るまでが遠足だってことを言いたいんじゃないの?」

令月とすぐりが、そうぼやいた。

ま、まぁ…。絶対揉めると思ってたのに、あまりにもあっさり心臓返してもらえたからさ…。

帰り道くらいは、自分で何とかしようぜ。

そこまで期待するのは欲張りってもんだ。

それに、今度は皆一緒だ。

砂漠で遭難したとしても、仲間と一緒なら怖くない。

…よな?

いや、砂漠で遭難なんてしたことないから…分からないけども…。

「これ…一体どっちに進めば良いんだ…?」

「砂漠で昼間に動くのは危険だよ。夜になるのを待たないと」

「残念ですね。冥界には朝も昼も夜もありません」

「じゃあ、迷う必要はないね。真っ直ぐ進もうか」

…それで脱出出来るのだろうか。甚だ疑問だが…。

「ねぇ、見て。あそこ」

ベリクリーデが、とある方向を指差した。

「家みたいなのが見えない?都市があるのかも」

都市…?

「砂漠に…都市なんてあるのか?」

「オアシスがあれば、そこが集落になることはあるだろうな。…とは言ってもここは冥界だから、あったとしても魔物の集落だが」

と、ジュリスが答えた。

魔物の集落…。非常に危険な香りがするが…。

「…他に目指す場所もないし、行ってみるか…?」

「…そうだね、それしかなさそうだね…」 

…よし。こうなったら、後は野となれ山となれ。

俺達は、ベリクリーデが見つけた砂漠の都市(?)を目指すことにした。

…まさか、こんなところで砂漠の散歩をすることになるとはな。

用事はもう終わったのだから、早いところ帰りたいのだが…?