「あ…あなた、は…」

「で、馬鹿なことしてるよ。全員満身創痍じゃないか」

ルディシア・ウルリーケ。

神出鬼没のネクロマンサーである彼が、ひょっこりと姿を現した。

どうして…ルディシアさんが、ここに…。

「…状況は大体把握してるよ。…『半端者』のマシュリが死んだんでしょ?」

「…それは…」

「で、そのマシュリの命を諦めきれないあんた達は、無謀にも冥界に飛び込んで、マシュリを蘇らせようとしている…」

…えぇ、その通りです。

「本当に馬鹿だよ、あんたらは。命っていうのはね、一度尽きたら終わりなんだよ。全員等しく死体になるんだ。それが世の理なんだ」

「…分かって、います」

こんなこと、マシュリさんは望んでないということだって。

だからこれは、生き残って置いていかれた、私達のエゴ。

そのエゴの為に、命を落とそうとしているんです。

「惜しかったな。マシュリが死体になれば、俺が有益に『使って』あげたんだけどなー」

「…」

「何せ、人間とケルベロスのハーフの死体なんだ。そりゃあ便利な人形になってくれ、いだだだだ」

「戯言を抜かしている暇がありますか?」

ルディシアさんの後ろから、もう一人。

イーニシュフェルト魔導学院の留守を任されていた女性教師が、姿を見せた。

「…イレースさん…!あなたまで…」

「いつまで経っても戻ってこないので、長丁場になっているんだと思って手伝いに来ました。このボンクラネクロマンサーも連れて」

ぼ、ボンクラ…。

元アーリヤット皇国皇王直属軍『HOME』の軍属魔導師だった方を…。そんな、猫の首を掴むように連れてきて…。

「ボンクラですが、一応魔力タンクくらいにはなるでしょう。遠慮なく使い潰してください」

「俺はあんたらを助ける義理なんてないのに、何で俺が命を張らなきゃいけな、」

「何か文句でもありますか?拳骨の一発でも食らわせたら、少しは物分かりが良くなりますかね」

「わ、分かった分かった!やるから!手伝うから!」

…ネクロマンサーを、拳骨で躾けるイレースさん。

さすがですね…。私も見習わなくては…。いえ、私には見習えそうにありませんが…。

「散々死体を使って私達に迷惑をかけたのだから、今度は役に立ちなさい。良いですね」

「ちぇっ…。ネクロマンサー使いが荒いよ…。…まぁ、でもあいつに死なれちゃ寝覚めが悪いからね」

そう言って、ルディシアさんは吐月さんの傍らにしゃがみ込み。

『門』を開く吐月さんに、自身の魔力を大量に注ぎ込んだ。

「…!」

一瞬にして楽になったのだろう、吐月さんが驚いたようにルディシアさんを見つめた。

「俺も、手を貸してあげるよ」

「ルディシアさん…!でも、あなたまで…」

「ネクロマンサーの保有魔力量、見くびらないでもらえる?あんたらの死体みたいな顔が、少しくらいマシになるまでは手伝ってあげる」

「…!ありがとう、ございます…」

願ってもない助け舟に、涙が出そうになった。