眠っていたはずの神竜バハムートは、ゆっくりと重たい瞼を開けた。
「お…起きてたのかよ…!?」
目を閉じていただけってヤツか。そうなのか。
それとも狸寝入りかよ。竜の癖に。
「いいや、眠っていた…。…つい先程までな」
やっぱり狸寝入りじゃなくて、本当に寝てたらしい。
もっと静かに入ってくれば良かった。
そうしたら、寝てる間に気づかれずに…。
しかし、何もこの神竜バハムートは、俺達が騒がしいせいで起きたのではないらしく。
「祠の封印が解けたのを感じて、長い眠りから覚めたのだ…」
と、神竜は語った。
…祠の封印…。
「ということは…やっぱり、ここが竜の祠なんだね」
「竜の祠か…。随分大仰な呼び方だ。ここは単なる老いぼれの巣穴に過ぎん」
シルナの問いに、神竜がそう答えた。
老いぼれ…。この神竜のことか。
よく見たらこいつ、竜の鱗は所々剥げ、色艶も悪く、尻尾や耳も張りがなく垂れ下がっていた。
なんだかやつれたような姿に見えなくもない…が、神竜族って老いるのか?
「老いぼれって、あんた…一体何歳なんだ?」
「さて…いくつだったか…。現世の時間で言うなら、恐らく1億年は生きているだろうな」
「いっ…!」
…1億、だってよ。
俺とシルナは、びっくりして顔を見合わせた。
すげー。シルナより年寄りは世の中にいないと思ってたが、上には上がいるもんだな。
「なに…。大したことはない。お前達がこれまでの一年、十年を振り返るように、私は1億年を振り返るだけだ」
達観してんなぁ。哲学者か?
「私がこれほど長く生きているのも、ひとえに、残された一つの役目を果たす為よ」
「役目…?」
「そんなことはどうでも良いけど、君、心臓持ってるの?」
令月が、単刀直入に老神竜に尋ねた。
自分より遥かに、遥かに年上の相手に。物怖じしないな令月は。
「そーだよ。マシュリの心臓。持ってるなら返して」
すぐりも。
「ここにあるんでしょ?」
「心臓…。マシュリ・カティアの心臓か…」
やっぱり知ってるんだな。
ここが竜の祠なら、マシュリの心臓もここに…。
「俺達は、マシュリの心臓を取り戻しにきたんだ。竜の祠って場所に、7つ目の心臓が封印されてるって聞いて…」
「そうか…。あの者はお前達に託すことを決めたのだな」
…?
どういう意味だ?
「この場所に、私以外の存在が足を踏み入れたということは、そういうことだ。あの者が自らの命運を託し、己の原罪を受け入れて進むことを決めた…」
…勝手に一人で喋って、勝手に一人で納得してるな。
そういうのは困るぞ。ちゃんと共有してもらわないと。
「…よく分からねぇけど、俺達は今から、封印を守るあんたと戦わなきゃいけないのか?」
例え神竜バハムートだろうと、老いぼれ竜の一匹くらい、今の俺達なら何とかなるだろう。
RPGゲームだと定番だろ。「封印を解きたければ、封印の守り人を倒して進め」みたいな…。
俺達も今から、それをやらせられるんじゃないか。
…と、思ったが。
「いいや、その必要はない…。お前達がここに辿り着いた時点で、既に封印は解かれている。マシュリ・カティアの心臓…持っていくが良い」
「…」
予想以上に話の分かる竜で、拍子抜けしてしまった。
「お…起きてたのかよ…!?」
目を閉じていただけってヤツか。そうなのか。
それとも狸寝入りかよ。竜の癖に。
「いいや、眠っていた…。…つい先程までな」
やっぱり狸寝入りじゃなくて、本当に寝てたらしい。
もっと静かに入ってくれば良かった。
そうしたら、寝てる間に気づかれずに…。
しかし、何もこの神竜バハムートは、俺達が騒がしいせいで起きたのではないらしく。
「祠の封印が解けたのを感じて、長い眠りから覚めたのだ…」
と、神竜は語った。
…祠の封印…。
「ということは…やっぱり、ここが竜の祠なんだね」
「竜の祠か…。随分大仰な呼び方だ。ここは単なる老いぼれの巣穴に過ぎん」
シルナの問いに、神竜がそう答えた。
老いぼれ…。この神竜のことか。
よく見たらこいつ、竜の鱗は所々剥げ、色艶も悪く、尻尾や耳も張りがなく垂れ下がっていた。
なんだかやつれたような姿に見えなくもない…が、神竜族って老いるのか?
「老いぼれって、あんた…一体何歳なんだ?」
「さて…いくつだったか…。現世の時間で言うなら、恐らく1億年は生きているだろうな」
「いっ…!」
…1億、だってよ。
俺とシルナは、びっくりして顔を見合わせた。
すげー。シルナより年寄りは世の中にいないと思ってたが、上には上がいるもんだな。
「なに…。大したことはない。お前達がこれまでの一年、十年を振り返るように、私は1億年を振り返るだけだ」
達観してんなぁ。哲学者か?
「私がこれほど長く生きているのも、ひとえに、残された一つの役目を果たす為よ」
「役目…?」
「そんなことはどうでも良いけど、君、心臓持ってるの?」
令月が、単刀直入に老神竜に尋ねた。
自分より遥かに、遥かに年上の相手に。物怖じしないな令月は。
「そーだよ。マシュリの心臓。持ってるなら返して」
すぐりも。
「ここにあるんでしょ?」
「心臓…。マシュリ・カティアの心臓か…」
やっぱり知ってるんだな。
ここが竜の祠なら、マシュリの心臓もここに…。
「俺達は、マシュリの心臓を取り戻しにきたんだ。竜の祠って場所に、7つ目の心臓が封印されてるって聞いて…」
「そうか…。あの者はお前達に託すことを決めたのだな」
…?
どういう意味だ?
「この場所に、私以外の存在が足を踏み入れたということは、そういうことだ。あの者が自らの命運を託し、己の原罪を受け入れて進むことを決めた…」
…勝手に一人で喋って、勝手に一人で納得してるな。
そういうのは困るぞ。ちゃんと共有してもらわないと。
「…よく分からねぇけど、俺達は今から、封印を守るあんたと戦わなきゃいけないのか?」
例え神竜バハムートだろうと、老いぼれ竜の一匹くらい、今の俺達なら何とかなるだろう。
RPGゲームだと定番だろ。「封印を解きたければ、封印の守り人を倒して進め」みたいな…。
俺達も今から、それをやらせられるんじゃないか。
…と、思ったが。
「いいや、その必要はない…。お前達がここに辿り着いた時点で、既に封印は解かれている。マシュリ・カティアの心臓…持っていくが良い」
「…」
予想以上に話の分かる竜で、拍子抜けしてしまった。