「知能の高い魔物ねぇ…。まぁ、そういうのがいてもおかしくはないだろうけど」

「うん」

「でも、何でわざわざ、こんな海の底に都市を作ったんだ?」

…うっ。

…それを聞かれると、僕も困るな…。

「な、何でなんだろう…?」

「不便じゃないのか?こんな深海の底でさぁ…。都市を作る知恵があるなら、普通に陸地に作れたはずだろ」

「…そうだよね…」

何で、わざわざ湖の底に都市を作ったんだろう?

水中都市の建設なんて、きっと大変な苦労があっただろうに…。

それでもこうして、深海の底に都市を作ったってことは…。

僕達には分からないけど、水の中の方が都合が良い理由があったんだろうね。

もしかして、僕達が今こうして、水の中なのに平気で呼吸が出来ていることにも、関係があるのだろうか…?

「それに、苦労して作った街を放棄して、ここの住民は何処に消えたんだよ?」

「え。そ、それは…。…別の場所に移住したんじゃ…?」

「こんな立派な都市を置き去りにして?ここ、まだまだ住めるだろ」

…確かに。

これほどの規模の都市、作り上げるまでには長い時間がかかっただろうに。

それなのに、どうして今は誰も住んでないんだろう…?

一族が全滅した?何らかの理由で…。

だけど…海底都市を作るほどの知識と技術がある、知能の高い種族が…そう簡単に絶滅するものだろうか?

この海底都市を作った種族より、更に上位の魔物に襲われて壊滅した…とか?

何の為に…?

「それとも、元々ここって…水の中じゃなかったのかも」

と、キュレムさんが呟いた。

え?

「どういうこと…?」

「だから、元々都市は地上にあったけど、何かの理由で水没して、ここら一帯が湖の底に…。…ふぁっ!?」

えっ?

突然キュレムさんが素っ頓狂な声を出して、僕もびっくりしてしまった。

「ど、どうしたの?」

何かいた?見つけた?…魚とか?

「なんか、今白っぽいものが…。あれ、何だ?気持ち悪い」

「白っぽいもの…?」

キュレムさんが指差す方向に、何やら白っぽい小さな山が出来ていた。

都市の瓦礫の下に、下敷きになっているようだ。

…ちょっと、持ち上げてみようか。

僕はそっと白い山に近づいて、力を入れて瓦礫を持ち上げた。

「ごめん、キュレムさん。そっち持ってもらえる?」

「はいよ。せーの…」

せーの、で二人がかりで重い瓦礫を取り除くと。

その下から出てきたのは、一面真っ白の、砕けた破片の山。

何だろう、これ…。発泡スチロールの欠片みたいな…。

「…ふぁっ!」

「な、何?」

またしても、突然キュレムさんが叫び声をあげて。

またしても、僕の心臓がドキンとした。

突然大きな声出さないで。びっくりするから。