無事に、化け物の胃の中から脱出することに成功した。

しかし、ここから更なるピンチが僕達を襲う。

「ふー、やれやれ。ようやく出られっ…、」 

「グギャアァァァァ!!」

「…めちゃくちゃお怒りですね」

そのようだね。

胃に穴を開けられた大男の化け物は、雄叫びをあげながらこちらを睨んだ。

平和的に話し合って解決…なんて出来そうな様子じゃないね。

そもそも、冥界の言葉は通じない。

一体どんな回復速度をしているのか、僕が風穴を開けたお腹の傷は、既に癒えていた。

しかし、痛みが消えてなくなる訳ではない。

大男が僕達を睨む目は、「よくもやりやがったな」と訴えかけていた。

そして。

「ギャアァァァ!」

再び雄叫びをあげながら、巨大な手のひらを伸ばして、僕達を掴もうとした。

もう一度僕達を食べて、今度は丸呑みじゃなくて、歯で磨り潰して食べてやろうと。

折角出られたと思ったのに、また食べられたら堪らないね。

僕とルイーシュは、大男の手のひらから逃れる為に走り出した。

「うわぁ。何が嬉しくて、こんな化け物と追いかけっこを…!」

愚痴りたくなる気持ちは分かるけど。

もう一回食べられる訳にはいかないから、逃げるしかない。

…しかし。

逃げるだけでも、簡単なことではなかった。

あの大男、デカブツの癖に、動きはかなり俊敏だ。

対して僕達は、ちょこまかと走って逃げるしかない。

おまけに足場が悪く、真っ直ぐ走るだけでも容易なことではなかった。

…不味いね。このままじゃ掴まりそう。

何処かに隠れる場所があれば良いんだけど、残念ながら、ここは非常に見通しの良い荒野。

隠れる場所などありそうもない。

じゃあ、いっそ立ち向かうか?

一瞬そう考えたけど、僕はすぐにその考えを棄却した。

立ち向かうのは無謀だ。あまりにも…「物量差」があり過ぎる。

先程お腹の中を一刀両断した時に、小太刀に腹の脂肪がべったりとついていて、切れ味も相当落ちている。

さすがに、この状態じゃ戦うのは無理。

かと言って、このまま逃げ続けるのもジリ貧…。
 


…と、思ったその時だった。

「…!」

僕とルイーシュの逃げ道を塞ぐように、前方に新たな化け物が出現した。